「建設的な会話を」

 介護では、介護される相手の思いを察し、寄り添うことが重要だ。しかし、利用者や家族から事業者に「言いたいことも言えない」という空気になってしまえば、本来めざすべき介護の形とは正反対の方向へ進んでしまいかねない。
 

「ヤギ」発言をした前出の職員の話には、続きがある。

 不信感を募らせた介護職員は、父親のケアについての要望を施設長に対面で伝えたところ、「全体的に優しい雰囲気に変わった」という。

「職員は父には優しく接してくれるようになりました。私も状況をみてお願いをするように気をつけているので、いい関係性だと感じています。

 利用者がカスハラをする奥には、わかってもらえないとか、雑に扱われたと感じたことへの悲しさや寂しさが隠れているのかもしれません。だからといって相手を貶めたり、踏みつけたりするような態度はダメだけど、それをふまえた上での建設的な会話が大切なのだと思います」

(AERA編集部・大崎百紀)

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