
5月からファームで調整している巨人・田中将大は通算200勝まであと2勝――。この数字が近いようで遠く感じるのには、1軍で登板機会がいつ巡ってくるか不透明な状況がある。
今月11日のイースタン・リーグ・日本ハム戦(ジャイアンツタウン)に登板して5回7安打4失点。1軍で実績がある野村佑希、田宮裕涼、アリエル・マルティネスらと対峙したが、立ち上がりから捉えられた。初回に田宮の右前打などで1死一、二塁のピンチを招くと、野村に適時打、マルティネスに右犠飛を打たれるなど歯止めが利かずに4点を先制された。2回も田宮に2打席連続安打となる適時打を浴びて5点目を献上。3回以降は変化球を低めに集めて3イニング連続無失点と立ち直ったが、1軍昇格に向けてアピールしなければいけない立場であることを考えると物足りない。18日のロッテ戦(ジャイアンツタウン)では、6回80球を投げて得点はあたえなかったものの、5安打を許した。
5月2日に登録抹消されて
「ポイントになるのは直球の質です。ファームと違って1軍の選手たちは球威、キレがないと痛打を浴びる。日本ハム打線にきっちりアジャストされている投球などを見ると、今のままでは厳しい。1軍再昇格にはもう少し時間が必要に感じます」(スポーツ紙デスク)
昨シーズンは右肘のクリーニング手術で出遅れたことが影響し、プロ18年目で初の未勝利。オフに楽天を退団して巨人に電撃移籍した。2月の春季キャンプから、多くの投手の復活に尽力し、昨年は菅野智之を再生に導いた久保康生巡回投手コーチの助言を受けてフォーム改造を断行。横振りだった体の使い方を縦振りに修正した。生命線の直球の球威を上げようという狙いだった。そして4月3日の中日戦(バンテリン)で移籍後デビュー登板を飾ると、5回5安打1失点の粘投で586日ぶりの白星をマーク。このまま波に乗りたかったが、その後は序盤に崩れて2試合連続KO。防御率9.00に悪化し、5月2日に登録抹消された。
巨人の球団OBは、こう指摘する。
「フォーム改造がすぐに成果が出るほど、甘い世界ではない。投球のメカニズムで新たな動きをなじませるためには時間が必要です。田中にとって状況が難しいのは、プロ野球界で『投高打低』の傾向が顕著になっていることです。以前なら5回3失点は『試合を最低限作った』と評価されましたが、各球団が得点を取ることに苦労している現在はクオリティースタートが記録される6回3失点でも勝てなくなっています。勝てる投手の共通点はストライクゾーンで空振りやファウルを奪える直球を投げられることです。変化球でかわす投球には限界があります。百戦錬磨の田中は理解しているでしょうが……」