B社長によると、Y建設は電気工事費以外にも、空調会社や内装会社、スプリンクラー設置会社にも未払いがあると万博協会に伝えたという。

「スプリンクラー設置会社は未払いを理由に撤退しようとしたが、それまで仕事をした分が未払いになる可能性や、ペナルティが発生する危険性を考えて最後まで工事をしたそうです」(B社長)

「これ以上、支払うことはありません」

 記者は、万博の中国政府の窓口である中国国際貿易促進委員会の担当者にメールで質問をしたが、回答はなかった。Y建設のS社長に連絡すると、次のように話した。

「X社はおかしいよ。Z社は三次下請けでしょう。なぜZ社をまじえて交渉してくるのかよくわからない、うちと直接関係がないのですから。もうお金は支払っています。これ以上、支払うことはありません」

 そして、

「あなたは中国のほうにも取材のメールを送ったでしょう。聞いていますよ。うちの監理監督がおかしいというが、ちゃんとライセンスを持っている人を現場に送っているから、なにも問題がない」

 というばかりだった。

 B社長はこう憤る。

「万博という世紀のイベントのためと思って、採算度外視をして協力した。それがこんな結果になって悲しい。お金を払わないなら、工事で使った電気設備、電線を中国パビリオンに行って回収してやろうと思うほど腹が立つ」

 万博のパビリオン建設で未払いが相次いでいることに、万博協会は原則的に「民間と民間の話なので、当事者同士で解決する問題」という立場だ。だが、建築エコノミスト森山高至氏はこう話す。

「未払い問題は、政府も万博担当大臣がいるのだから無関係ではない。国家的なイベントだからと意気に感じて頑張った日本の業者の多くが泣き寝入りしているというのは、大臣や万博協会が機能せず、無責任になっている証拠です。前回のドバイ万博では、海外パビリオンについては政府が建設費用を保証していました。海外パビリオンは万博の大きな目玉なのですから、国や協会がきちんとフォローすべきです」

(編集部・今西憲之)

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