実際、記者は万博開幕の10日前ほどに万博会場で取材をしたが、その際、中国パビリオンは工事の真っただなかで、現場の作業員は、
「暗くなると投光器をつけて、作業を進めています。なんとか間に合わせないとダメだと指示があって大変です」
と話していた。
X社の3次下請けに入ったZ社のB社長は、中国パビリオンの電気工事を最前線で仕切った。B社長はこう話す。
「工事が遅れたのは設計変更もあったが、Y建設から派遣された監理監督の中国人技術者が、日本語が十分に通じず、現場作業にも無知で、とんちんかんな指示をしていた点もあげられます」
万博協会は昨年7月5日、中国パビリオンの建設現場で、長さ10メートル、厚さ5ミリの鋼材8枚を吊り上げ作業をしている際に、地上3メートルほどの高さから落下する事故があり、一時、工事が中断したことを発表している。けが人はなかったという。
「未払いは約6700万円」
A社長によれば、開幕直前にはなんとか工事を終えることができた。最終的に追加工事を含めて、工事金額は約1億4500万円に達したという。そこでY建設に支払いを求めたが、
「すでに本工事分は支払い済み。追加工事分は支払えない」
などと言われ、約6700万円が今も未払いのままだという。
A社長は、こう訴える。
「Y建設からの支払いがなければ、Z社など下請け会社に払えません。直談判しようと、B社長と一緒に4月18日に名古屋のY建設に行きました。こちらから出勤票、見積書などを持参し、Y建設の担当者と話し合い、6700万円以上の支払いが滞っていることを確認した。担当者は『社長に連絡をしてきちんと対応する』と約束してくれました。その後、Y建設のS社長から連絡があったのですが、『一切払いません』というばかり。怒りに打ち震えました」
その後もS社長の態度は変わらなかったため、A社長らは万博を所管する経済産業省や万博協会にも相談したという。
「X社、Z社、Y建設で話し合いができるテーブルを作りたいという話が5月のゴールデンウイーク明けにありました。経産省からは、中国政府の担当部門に照会することも可能と聞いている。しかし強制力はないそうです」
とA社長は沈痛な表情で話す。