そもそも、妊娠・出産中の失職は、健康保険証の返納を迫られ、産後の母子には致命的な影響をもたらす。育休も育休手当もなく、乳児を抱えての再就職活動は難しいことからキャリアが断絶される。その結果、年金にも影響し、老後の貧困リスクも高めるという。

「そして、不当な雇い止めは、当事者に大きな精神的苦痛を与え、『子どもを産むことは懲罰だ』と感じさせる原因にもなります。国が推進する少子化対策に逆行するものです」

 いま、財政負担の抑制や柔軟な雇用調整を目的に、非正規公務員の数は増えている。内閣人事局や総務省によると、期間業務職員は全国に約4万人(23年度)、会計年度任用職員は同約66万人(24年度)で、いずれも約8割が女性。対策は急務だ。

「2人目はどうしようかと考えてしまう」

 竹信さんは、「一方的な雇い止めは人権侵害であり、国や自治体から独立した権限のある人権監視機関の設置が必要」と指摘し、こう言う。

「女性が親になることを選んだら職を失うリスクにさらされることが、人権を守るべき公的機関で構造的に起き得るという社会で、安心して子どもを産む気になるでしょうか。少子化の根底にあるこの現実を、私たちは直視しなければいけません」

 冒頭の女性は、「国は少子化対策を掲げているにもかかわらず、公務員に出産の不安を抱かせるような働かせ方をするのは根本的に矛盾している」と語る。

 今の職場で働き続けたいという思いがある一方で、1年ごとに契約更新する働き方だと安心して働くことができないと話す。今回の妊娠中もずっと「この先どうなるんだろう」と不安を抱えながら過ごし、精神的にもつらかった。同じことを繰り返すことになるのなら2人目はどうしようかと考えてしまう、と女性は訴える。

「安心して働ける環境に、正規・非正規を問わず整えていただきたいと思います」

(AERA編集部・野村昌二)

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