会計年度任用職員も、地方公務員育児休業法によって、育児休業を理由とした不利益な取り扱いは禁止されている。それなのに女性は、3月末で契約更新を打ち切られ、雇い止めとなったという。

 ジャーナリストで、VOICESのアドバイザーでもある竹信三恵子さん(和光大学名誉教授)は、「期間業務職員も会計年度任用職員も、『妊娠切り』の温床となりやすい」と指摘する。ともに「単年度限りの職」という建前になっているが、実態は恒常的に必要な人材を毎年度任用し直し、都合が悪くなると「単年度で終わるはずの仕事だから」とクビにする仕組み、妊娠が判明するとこの手法で簡単に人を取り換えられる構造になっている、と指摘する。

「妊娠=自己責任」

「妊娠や育児を理由にした雇い止めは違法とされているため、『勤務評価が悪かった』など別の理由にすり替えます。しかし、勤務評価は基準があいまいなので抗弁できません。そんな妊産婦排除のケースがあちこちで起きています」

 背景にあるのは、「妊娠=自己責任」「夫がいるならいいだろう」といった組織内に根強く残る旧態依然とした意識だという。公務員は「雇用」ではなく、行政の要請による「任用」であるため労働契約法の対象にならず、無期転換ルール(契約期間が5年超の勤務で無期雇用になる権利)が適用されないなど、不安定な立場に置かれている。しかも、非正規の場合、紛争解決の受け皿が事実上整っておらず、泣き寝入りするしかないのが現実だ。

 竹信さんは、このような妊産婦切りはまず「経済的な困窮を生む」と批判する。

「夫がいるからといいますが、男性の賃金水準の低下で非正規の妻が家計の4分の1は稼ぎ出しているという調査もあります。特にシングルマザーだと、生存権に直結する深刻な影響が出ます」

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