「4月から勤務時間や曜日など勤務条件等が変わるため、公募をかける必要が出てきた。今回は『契約更新』ではなく『公募』という形になった。やる気があるなら、あなたも受ける資格があるので受けてほしい」
つまり、継続して働くには、採用試験を受けろというのである。
「4月から出産でいなくなるとわかっている私が、試験を受けて受かるんですか?」
そう聞く女性に上司は、「それは組織が判断するのでわかりません」と答えた。
続いて上司の口から出たのが、冒頭の「ネック」という言葉だった。妊娠・出産の時期が契約更新のタイミングと重なったことがネックになった、と説明されたのだ。
再び働くには試験を受けるしかないと判断した女性は、臨月の体で筆記試験を受け、面接に臨んだ。3月末には採用通知を受け取り、4月中旬に無事に出産。6月中旬から育児休業に入っている。今は気持ちとして落ち着いているものの、こう話す。
「来年3月に契約が更新されるかどうかわからないという不安があります」
「年度末に休む人の雇用は更新できない」
産休・育休を希望したら雇い止めに――。国や自治体が、単年度契約の非正規公務員に産休・育休を取らせず、妊娠が判明すると雇い止めとするケースが各地で起きている。
国や自治体で働く非正規公務員らでつくる団体「VOICES(ヴォイセズ)」が3月にオンラインで行った「非正規公務員妊娠・出産に関してのアンケート」では、複数の回答が寄せられた。
そのうちの一人は、地方自治体の「会計年度任用職員」として働く女性だ。会計年度任用職員は、都道府県や市区町村の役所などで働く非正規地方公務員のこと。単年度ごとの契約更新というのは、期間業務職員と変わらない。
この女性も3月の出産を控え、上司に産休・育休の取得を申し出た。すると、「年度末に休む人の雇用は更新できない」「夫に養ってもらえばいいじゃないか」などと言われ、しまいには「勤務態度に問題があったので契約更新できない」と告げられたという。