AERA 2025年6月16日号より
AERA 2025年6月16日号より

異業種出身でもOK

 そこで人材会社に登録。エージェント経由だと、これまで働いてきた業界にしばられることなく、働ける場所を探せることが醍醐味だと話す。

「私自身、知見が広がり、先方にとっても異業種出身者から新たな評価方法や企業文化を知るなど双方にメリットが生まれています」

 社外取締役としての重要な任務はまず、取締役会で発言することだ。会社の経営に関わるため、全ての発言に責任が伴い、かつ記録されるため、会議に出席するにあたっての事前準備に心血を注ぐという。役員をはじめ、その人のもとで動く人たちの力関係、考え方、目指す方向性などを把握するようにしている。

「取締役会で話を聞いているだけでは正しい判断ができないため、社内情報を集めます。経営会議を傍聴することも。準備には会議の何倍もの時間を費やします」

 大変ですよ、と笑った女性は、こう続けた。

「企業は外からの客観的な意見を求めています。特に、しがらみや社内政治が多い企業では、経営者ですら意見が言えないことがあります。私は、間違っていることは間違っている、正しいことは正しいと言うタイプ。忖度なく意見を述べる私自身のポリシーとも合っているので、社外取締役という立場を選んでよかったと思っています」

 社外取締役が女性たちのキャリアの選択肢として注目されるようになったのは、企業統治をする際の指針となる「コーポレートガバナンス・コード」が策定された2015年頃からだ。

 内閣府による「女性版骨太の方針2023」では、東証プライム市場に上場する企業の女性役員の比率を2030年までに30%以上にする目標が記載されている。

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