
極貧の家庭から韓国大統領に当選した最大野党「共に民主党」の李在明氏。従来の革新系政治家とは少し違う政治姿勢だという。日韓関係はどうなるのか。AERA 2025年6月16日号より。
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韓国大統領選が3日投開票され、進歩(革新)系最大野党「共に民主党」の李在明氏が当選した。李氏は第21代大統領として今後5年間の国政の指揮を執る。李氏は京畿道知事時代の2021年、韓国の建国の過程について「親日勢力が米占領軍と力を合わせ、支配体制を維持した」と語ったこともある。大統領選では「日本国民に非常に好感を持っている」と語った李氏だが、日本との関係をどのように構築していくのだろうか。
李氏は1963年、南東部の慶尚道生まれとされる。「される」としたのは、非常に貧しい環境で、両親が李氏の正確な誕生日を記録していなかったからだ。小学校を卒業後、京畿道城南市に移り住んだ。そこには都市の再開発事業で自宅を追われた貧しい人々が暮らしていた。李氏の一家も日々の食事や日用品にも心配する生活で、李氏は少年工として働いた。弱い性格ではなく、媚びたりへつらったりしないため、小学校時代の教師や少年工時代の上司によく殴られたという。
左派団体の支援受ける
李氏は大学検定試験を受けた後、ソウルの私立、中央大学の特待生になった。そこで学費だけでなく生活費の支援も受けて勉強を続け、司法試験に合格して弁護士になったが、李氏はそれだけでは満足しなかった。城南市を含む地域で活動していた左派系団体「京畿東部連合」と親しい関係になり、支援を受けて城南市長選や京畿道知事選で勝利した。極貧の家庭出身という出自と政治活動の際の出会いの過程から、李氏は進歩系の政治家になった。
冒頭に挙げた、韓国の建国過程についての認識こそ、進歩のアイデンティティーそのものだ。進歩系の人々は「抗日パルチザンだった金日成が建国した北朝鮮こそ半島唯一の正統な国家」「少なくとも南北が協力して建国すべきだった」と唱える。保守系の人々の「国際情勢の現実をみた場合、米国と協力して単独で建国したことは正しい選択だった」という考えとは真っ向からぶつかる。