自分の強みを見つけて

「自分は他の人より体が小さいな。勉強がなかなか覚えられないな。本人にとっては小さな小さな気づきかもしれませんが、積み重なっていくと自己肯定感の低下につながる可能性はあります」

 冒頭の女性も「(遅生まれの子と)こんなに違うのか!とびっくりすることばかり。自己肯定感も低くなってしまうのでは」と心配する。どうしたらいいのだろうか。

 瀧さんは「『自分の強みを見つけること』が大切」としたうえで、2つのコツを挙げる。

「一つは、『自分は楽器を弾くのがちょっと上手』『友だちの数がちょっと多い』など、『ちょっとできる』を3つ持つこと。周りの大人もその子の『良さ』を伝え続けてあげること。3つを掛け合わせて『これらができるのは自分しかいない』と思うことができれば、自己肯定感を伸ばせると思います」

「ほめられる」は脳の発達にプラス

 もう一つは、子どもががんばったときに「ほめること」。ほめられると脳の発達にプラスになることは、瀧さんの研究でも明らかになっているという。

「たとえばテストで100点満点をとったとして、『結果』よりも『過程の努力をほめる』がポイント。努力をほめれば、より難しい段階にチャレンジする力につながるはずです」

 早生まれはもちろん、悪いことばかりではない。読者アンケートには、こんな声もあった。

 大学職員として働く埼玉県の46歳の女性は、2月生まれの早生まれだが、こう指摘する。

「大人になってからは、誕生日が来るのが同学年の人よりも遅くて、いつまでも若くいられる。29から30になるとき、『私まだ20代だもんねー』みたいな。この4月に転職したときも、面接段階ではまだ45歳。1歳の違いは大きいと思いました(笑)」

若いうちに脳が刺激を受ける

 瀧さんも、「早生まれは不利」というステレオタイプの考え方は変えるべき、と考える一人だ。脳科学の視点から早生まれを分析すると、こんな大きなメリットがあるという。

「早生まれと遅生まれが同時期に同じ環境に入るということは、逆にとらえれば、早生まれのほうが『若いうちに脳が刺激を受ける』ということです」

 脳には、努力することで変化する力=「可塑性」がある。より早く、より難度の高い環境に接することで脳が刺激を受け、この可塑性を高めやすいという大きなメリットがあるのだという。

「たとえば中学受験。早生まれの子が挑戦するにはハードルが高いと感じる人もいるでしょう。たしかに、不利である傾向を示す調査結果も存在します。でも、脳の可塑性を高めてあげるためにも、早生まれでも中学受験に挑戦する。あるいはいろんなことにトライする。これは素晴らしいこと。脳が早いうちからたくさん刺激を受け、脳の活性を高められて、結果的に能力が伸びる。早生まれだからこそのメリットだと思っています」

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