
6月3日からプロ野球交流戦が始まった。今年で20回目を迎えたセ・パ両チームの期間限定対決は、ふだんのペナントレースとはいささか勝手が違うとあって、まさかの勘違いによる珍事件も多く生まれている。
セ・リーグにはないDHの起用をめぐり、痛恨のうっかりミスを演じてしまったのが、広島・野村謙二郎監督だ。
2011年5月20日のオリックス戦、相手の先発が右の木佐貫洋か左の中山慎也か読みきれず、悩んだ野村監督は、投手の今村猛を偵察要員として7番DHで起用した。
ところが、指名打者は少なくとも1度は打撃を完了しないと交代できないルールを失念していた。
試合前のメンバー表交換の際に審判団とオリックス・岡田彰布監督から指摘されて勘違いに気づいた野村監督は「予期していなかった。あれは僕の失敗、ボーンヘッド。言い訳しようがない」と天を仰いだが、時すでに遅し……。
直後、コーチから「バットを振れ。お前、DHだぞ」と言われた今村も、初めはからかわれていると思ったという。「『また何か言ってるよ』って普通なるじゃないですか。そしたら、マジだったんですよねぇ」(2025年4月20日付「full-count」)。
そして、0対0の2回1死一塁で、今村に打順が回ってきた。ここは送りバントの場面。「どうなるかと思いましたが、バントは得意だったので良かったです」と見事成功させると、5回の2打席目に代打・石井琢朗と交代した。
結果的に野村監督のミスは帳消しになったが、5月中旬以降1勝4敗1分と不振が続くチームは、この日も2対3と逆転負けを喫し、1分けを挟んで3連敗(その後、5月下旬から6月初旬までセ・リーグワーストの50イニング連続無得点を記録するなど10連敗)。投手のDH起用は、皮肉にも低空飛行の象徴的事件としてクローズアップされることになった。
勝利投手になったうれしさから、つい口を滑らせ、お立ち台で翌日の先発投手をばらしてしまったのが、ヤクルト時代の藤井秀悟だ。