2005年5月18日の楽天戦、藤井は7回まで楽天打線を無失点に抑え、8回に代打・吉岡雄二と礒部公一に連続被弾を許したものの、守護神・石井弘寿のリリーフを得て、3対2で勝利投手になった。

 試合後、ヒーローインタビューに呼ばれた藤井は「最後にホームランを2本打たれて、相手を乗せてしまった」と反省したところまでは問題なかったのだが、「明日投げる川島(亮)に悪いことをしました」と、うっかり翌日の先発投手の名を口にしてしまった(交流戦の予告先発は2012年から)。

 宿舎に戻ったあと、遅まきながら失言に気づいたが、あとの祭り。伊東昭光コーチから「お前はいつからコーチになったんだ?」と嫌みを言われ、川島からも「違う投手の予想もあったって聞きましたよ。どうしてくれるんですか」と抗議される羽目になった。

 だが、翌日は川島が2安打10奪三振完封の9対0で連勝。藤井が胸をなでおろしたのは言うまでもない。

 一方、翌日の先発を相手に勘違いさせる名演技を見せたのが、日本ハム時代のダルビッシュ有だ。

 2006年5月30日の巨人戦、日本ハムの先発は、1週間前の同23日に巨人を8回まで1失点に抑えて勝ち投手になり、中6日と休養十分の左腕、コリー・リーと予想された。

前日にもダルビッシュが「5月30日 先発投手67 リー」と印刷されたメニューを報道陣に披露し、リー本人にも「頑張れよ」と声をかけていたので、確定と思われた。

 ところが、いざふたを開けてみれば、先発は中5日のダルビッシュではないか。先発・リーと信じて右打者5人を並べる左腕用オーダーを組んできた巨人・原辰徳監督はまんまと裏をかかれてしまった。

 巨人打線を被安打6、奪三振7の2失点完投で勝利投手になったダルビッシュは「騙されているんやなという優越感はありました。それが楽しくてやっているんで、完璧っす」とニンマリだった。

 ボールボーイの勘違いが原因で、一度ホームインした走者が三塁に戻される珍事件が起きたのが、2017年6月7日の楽天対DeNAだ。

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