備蓄米以外のコメの価格は下がらない
さらに、コメの価格を下げると言っているのに、入札にすることで、より高い価格で売ろうとした。政府が高い価格で売るのだから、末端価格は下がらない。
小泉農水相がやっている定価販売(随意契約)の仕組みも、実はもともと法律で可能な仕組みだ。価格を下げることは簡単にできる。
以上が備蓄米を出してもその備蓄米の流通が滞り、さらに価格も高くなってしまったことの解説である。
小泉氏が進めていることは、今解説した問題をクリアしようとするものだ。基本的に正しい方向を向いている。世論調査でも小泉氏への期待は高い。
ただし、備蓄米の価格は下がっても、その後、備蓄米以外のコメの価格が下がるわけではない。
国会などでも、この点を追及する野党議員もいた。下がるかどうかはわからないと答えれば、「やっぱり下がらないのか。選挙前のパフォーマンスに過ぎないのか」と言われるから、小泉氏は、意味不明なことを言いながら、「生産者と消費者双方が納得できる価格を見出すことが重要」などと、抽象的な言葉で逃げざるを得なくなっている。
では、本当の見通しはどうなのか。
これは、今農家が作っているコメの価格の問題だ。
農協が農家に出荷段階で渡す金を概算金(仮渡金)と言うが、今年のコメについては、各県の農協がすでにこれをかなり高くする「方針」を出している。昨年の5割増しという報道もある。
普通に考えれば、今年の秋から出回るコメを高値で農協が買い取るのでコメの価格は上がる可能性が高い。これが真実である。
自民党政権は、農協の方ばかり向いた政治をやっている。消費者は二の次。それが自民党の本質だ。
自民党政権である限り、消費者のためにコメの価格を下げようというのは、表向きの話に過ぎない。選挙前にパフォーマンスで国民を騙すための「対策」や「改革」がPRされるだけなのだ。
もう一つ、私たちが気をつけなければいけないことがある。
それは、「農家は可哀想だから守ってあげなければいけない」という話だ。
農家といっても、稼ぎ頭は町の工場で働き、その妻と年老いた親たちが細々と農業をやっているというような小規模の兼業農家もあれば、法人経営や家族経営でも大規模な農業をしている「プロ農家」もいる。現在、この「プロ農家」が全国の耕地の約6割を使い、農産物の販売金額の約8割を占める。ただし、数では、個人経営の小規模兼業農家の方が圧倒的に多い。
農協は、兼業農家の数を維持するのに必死だ。数が減れば政治力が落ちるからだ。また、彼らは、農協のドル箱、金融事業の顧客だ。住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、保険など、農家であれば農協の商品を選ぶ人が多い。小規模で儲からなくても、農家であり続けて農協の組合員でいてくれさえすれば良い。農家の数が減っては困る。