前農水相の背後にいた農協と農水族議員
前述のとおり、2024年8月頃に店頭からコメが消え、価格も上昇した。国民に対して食糧の安定供給ができない事態だから、備蓄米を放出するのが政府の責務である。
しかし、農水省は、これを拒み続けた。今回の米騒動最大の原因だ。
コメが足りないことを認識できず、気づいても備蓄米放出が遅れたのはなぜか?
それは、価格を高く維持したい、少なくとも下げたくないという農協とこれと癒着した農水族議員がいたからだ。しかも当時は、まもなく自民党総裁選挙があり、その後に衆議院の早期解散総選挙が予想された時期である。農協を恐れた自民党は、価格低下を招く備蓄米放出を口にすることができなくなり、スーパーの棚はスカスカのままだった。
これを見た消費者やコメを仕入れる企業は、自分の分だけは確保しよう、値上がりする前に買っておこうと考える。多くの人、企業がいつもより多めにコメを買い、ますますコメは足りなくなった。
さらに、小売店は、いつもより高くコメを仕入れたので、高く売るしかない。値上がりを待って売ろうという輩も現れる。これがスパイラルを生み、価格は急上昇し始めた。
こうしてみると、今回の米騒動の原因は、農水省の無能さと無責任さにあると言って良い。もちろん、農協と族議員の責任も重大だ。
中でも、「コメを買ったことがない」という妄言を吐いてクビになった江藤拓農水相は、渋々備蓄米の放出を決めてもなお、後述するとおり、コメの価格低下を阻止しようとした。A級戦犯と言って良い。
食糧管理制度があった時代は、国が農協からコメを買って、これを卸売業者に売り渡していた。この制度が廃止された後に、政府が備蓄しているコメを市場に出した時も農協に売ったことは一度もない。普通に考えれば、今回もJA全農ではなく、少なくとも卸売業者に売るべきだったし、最初から小売業者に売ることも自由にできた。
また、政府は、買い戻し条件など過去に一度もつけたことがないのに、今回だけはそれをつけた。卸売業者などは後で大量のコメを集めることはできないので、事実上入札に参加できなかった。農協に備蓄米を集中させるための汚い手段としてこの条件が使われたのだ。
最も川上の農協に売れば、その下につながる卸売以下の段階で流通コストがかかる。
農協と言っても、地域の農協、県単位の農協、さらに全国単位の全農がある。彼らがそれぞれ手数料を取る。消費者に届く価格が高くなるのは当たり前だ。
韓国では、産地で精米して袋詰めし、それを直接スーパーに運んでいる。極めて効率的だ。
政府が多くの小売業者や外食産業などに備蓄米を直接売れば価格が下がるはずだが、そうしなかったのは、江藤前農水相とその背後にいる農協と農水族議員が原因だ。