本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能なほがらか人生相談』(朝日新聞出版)
本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能なほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 きこりさん。苦しんでいますね。きこりさんの問題は、「親しい相手とのコミュニケーションの仕方の大部分を両親から学んだ」ということですね。

 例えば、中学や高校の部活でひどい先輩がいて、後輩をいじめ抜いたとします。先輩が卒業して、自分が指導する立場になった時、先輩みたいになりたくないと思っていても、先輩の指導方法しか知らないから、同じことを繰り返してしまう、というパターンですね。

 そういう時は、他の指導方法を知る必要がありますよね。他の学校に行って部活を見せてもらうとか、指導方法の本を読むとか、YouTubeでプロの指導方法を学ぶとか、ですね。

 きこりさんも、同じ方法がいいと思います。

 まずは、夫に対して、「自分は『物を壊して理不尽に暴れる』父親と『ヒステリックに泣き叫』ぶ母親に育てられた」ということは伝えましたか?

 そして、「そんな風には絶対になりたくないのに、気持ちに余裕がなくなると、自分が唯一知っているコミュニケーションのやり方をしてしまう」と伝えるのです。

 いじめられた後輩が先輩になった時に、新入生に対して「僕は君たちをいじめたくはない。だが、焦ったり、余裕がなくなると、きつい言い方になるかもしれない。その時は、指摘してほしい」と伝えるのと同じです。

 夫は優しい人なんですよね。きっと、「今の言い方は、母親と同じじゃない?」と、穏やかに指摘してくれるんじゃないですか?

次のページ