
5月25日に千秋楽を迎えた大相撲の五月場所。大の里が14勝1敗で2場所連続4度目の優勝を果たし、第75代横綱に昇進を決める一方で、三役や平幕の力士の相撲っぷりは悲喜こもごも、明暗が分かれた。そんななかでとくに注目されるのが、大の里が抜けたあとの大関の座を誰が今後、射止めるのか。元NHKアナウンサーとして数々の名実況を残し、70年にわたって大相撲を見続けてきた伝説の相撲ジャーナリスト・杉山邦博さん(94)も、「次の七月場所のいちばんの注目は、大関争い」と言い切る。新横綱・大の里だけではない大相撲の魅力と見どころについて、たっぷりと聞いた。
【写真】伝説の相撲ジャーナリスト・杉山さんの貴重な取材ノート
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──大の里の優勝で盛り上がった五月場所ですが、残念だったのが琴桜(大関/8勝7敗)です
がっかりしてるファンは多いでしょう。とにかく、攻めが遅いです。四つ身になっても前に出ないですぐ止まってしまう。しかも腰高でしっかりと上手がとれないまま半身で止まってしまうことが多く、そこを攻められてしまう。もっと「自分から攻める」ことを貫いてほしいね。そこに尽きると思います。そうしないと忘れられてしまいますよ。奮起してほしい。大の里と豊昇龍の間に割って入る力はあるはずなんだから。
──関脇、小結では大栄翔(関脇/10勝5敗)、霧島(関脇/11勝4敗)、若隆景(小結/12勝3敗)の活躍が光りました
大の里が横綱になり、大関の枠が一つ空きます。王道として大関は必ず東西にいないといけない、それが大相撲の番付なんです。昇進の条件は甘くなるでしょう。七月場所では新横綱・大の里の相撲ももちろんですが、「最大の注目を一つ上げるとしたら?」と聞かれたら、私は間違いなく「次の大関争い」と答えます。
大関への一番手は若隆景でしょう。頭一つ抜けてます。技術の高さはもちろんですが、脇を固めてどんどん前に出る相撲がいい。うまさだけでなくスピード感も出てきた。初優勝したころ(2022年三月場所)の状態に完全に戻ってきました。
二番手は霧島。安定感がありますね。四つ相撲でまわしを引いたときの力強さは大関時代を彷彿とさせるものがある。気持ちも強い男ですから、大関に返り咲く可能性もあると思います。
なぜ、大栄翔が三番手か。若隆景や霧島と比較するとどうしても突き押しだけの力士ですから、安定感の面で不安が残るんですよね。意外な相手との対戦で星を落とす。今場所ももう一番二番勝ってもおかしくなかったのに、そういう意味では苛々させられます。個人的には大関になってほしい、と応援しているんですが。