
阪神の佐藤輝明が5月25日の中日戦(バンテリンドーム)に今季初の左翼で先発起用され、見せ場を作った。9回に福永裕基の打球が佐藤の頭上を越えると、フェンスからのクッションボールを素手で捕球し、球場の最深部から勢い良く投げ込んで二塁にノーバウンドのストライク送球。福永の二塁到達には間に合わなかったが、強肩を披露し、球場がどよめいた。
三塁を守ってきた佐藤が外野守備についたのは3年ぶりだった。三塁に新外国人のラモン・ヘルナンデスを起用するための策だったが、この試合で佐藤は猛打賞をマークし、ヘルナンデスも7回に左翼線二塁打でチャンスメーク、チームも勝利と、好結果につながった。攻撃型布陣として、今後も佐藤が左翼を守る機会はあるだろう。
佐藤は好不調の波が激しいのが課題だったが、今季は春先からコンスタントに打ち続けている。打率.294、12本塁打、34打点をマーク。本塁打、打点でリーグトップを走る。好調なのは打撃だけではない。他球団のスコアラーは「三塁の守備が昨年までと比べると格段に良くなっていますよね。腰の位置が低く、下半身を使ってゴロをさばいている。特に三塁線の鋭い打球を逆シングルで好捕するのが目立ちます。安定した守備を続けることで、良いリズムで打席に入れていると思います」と指摘する。
打撃好調の主砲の守備位置は固定するのが常道だろう。だが、正左翼手として期待された前川右京が打撃不振で5月22日に登録抹消となった。豊田寛、高寺望夢を左翼で起用していたが、代打で好結果を残していたヘルナンデスにチャンスを与えることになり、ヘルナンデスの本職が三塁のため、外野経験がある佐藤が左翼に回った。
複数のポジションを守ることで心身に負担が生じるかもしれないが、今後の野球人生を考えると佐藤にメリットをもたらすかもしれない。メジャーリーガーの代理人はこう語る。
「佐藤は将来メジャー挑戦を希望していることがメディアで報じられています。三塁の守備でグッと安定感が出てきましたが、外野を守れればメジャー球団の評価がさらに上がります。プロ2年目までは右翼をメインに守っていましたし、違和感はないでしょう。個人的にはセンターを守れる適性があると思っています。足が速いですし、肩も強い。身体能力が高く、外野の守備でも一流になれる素材です」