米国と日本の非常に似通った状況
彼によると、一般に、極右政党には、自国について、「かつては偉大な国だったのに、リベラルや批判的な歴史観で没落した。我々が皆さんを自虐史観から救う。かつての権威主義に立ち返るべき」だと言い募る傾向がある。
こうした言説が極右政党などにより広がるのは、「民主主義が後退しつつある国でよくあること」だと言う彼の言葉の中に、「日本の政治も含めて」という言及がなされていたのにハッとした。
つまり、彼は、トランプ政権と過去のファシスト政権に共通性を見出すと同時に、その共通点が日本政治でも見られることを発見したのだ。
そこで誰もが思い浮かべるのは、自民党の旧安倍派を中心とした右翼的歴史修正主義者たちの言説だ。つい最近も、西田昌司参議院議員が、沖縄のひめゆりの塔の展示を「歴史の書き換え」と述べて、日本中から強い批判を受けた。
朝日新聞(5月7日配信)によれば、彼は、戦後の歴史教育について「でたらめなことをやってきた」と主張。その上で、「何十年か前」に訪れたというひめゆりの塔について、「説明を見てると、要するに日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆりの隊が死ぬことになった。そしてアメリカが入ってきて、沖縄が解放された。そういう文脈で書いている。歴史を書き換えられると、こういうことになっちゃう」「沖縄の場合、地上戦の解釈を含めてかなりむちゃくちゃな教育のされかたをしている。自分たちが納得できる歴史を作らないと」などと発言したそうだ。
まさに、スタンリー教授のいう極右政党が主張する議論の代表例ではないか。
こうして見てくると、米国と日本は実は非常に似通った状況にあるという印象が強まる。大学への攻撃で学問の自由が脅かされ、極右政治家が歴史を書き換えて、昔の権威主義に戻ろうとする。
スタンリー教授は「抗議の声は学者や知識層ではなく、一般市民から出てくるのが最も有効だ」と述べていたが、これは非常に重要な指摘だ。
特に、日本では、夏に参議院選が控えているので、我々一般市民が声を上げれば、事態は変わる可能性がある。
日本学術会議法案への抗議の声をさらに大きくして、政府・自民党に届けていかなければならない。
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