トランプ政権とファシズムの共通点
一方、法案では、財源措置に関する規定は、はるか後ろの第48条に置かれ、「政府は、予算の範囲内において、会議に対し、その業務の財源に充てるため、必要と認める金額を補助することができる」とされた。現行法とは全く違う。必要な金額か否かは政府が決める。補助「する」ではなく、「できる」だから、しなくても良い。
政府の言うことを聞かなければ、予算をつけなかったり、減らしたりするという脅しである。
ここまで読んでいただくと、政府が何と言おうと、この法案は、学術会議を政府の支配下に置くことを目的としているということをご理解いただけるのではないだろうか。
そのことは、実は、こんなまどろっこしい法律論をしなくても明白なことだ。それは、そもそも、学術会議が推薦した6人の新会員候補の任命を拒否した「事件」を見ただけでよくわかる。
政府は、首相による任命は形式的で、学術会議が推薦した候補者をそのまま任命するという立場をとっていたが、2020年9月、菅義偉元首相が突然これを変更して学術会議が推薦した6人の学者の任命を拒否した。しかし、明確な理由は示されなかった。6人の学者は特定秘密保護法や安保法制に反対するなど、政府に批判的な意見を表明した人たちだと言われている。菅元首相が、こうした「望ましくない学者」を排除しようとしたことは明らかだが、政府はこの任命拒否の理由を明らかにしていない。本当の理由を言えないからだ。
立憲の小西洋之参議院議員が21年、首相任命に関する法解釈の検討経緯がわかる文書の開示を求めたのに対して、政府は重要部分を黒塗りにした一部開示しかしなかった。本当のことがわかると困る事情があるのだろう。
これを不服として小西議員が全面開示を求めた裁判で、今月16日に東京地裁は、全面開示を命じる判決を出した。非常に重要な事実が明らかになる可能性があるので、それが開示されるまで参議院での法案の審議は待つべきである。
ところで、米国でのトランプ大統領の大学攻撃によって、米国外に脱出する学者が出ていると書いたが、その一人、米名門のイエール大学でファシズム研究を続けてきたジェイソン・スタンリー教授が面白い発言をしていた(テレ朝news)。
それは、トランプ政権とファシズムに共通することがあるという話だ。