
神宮外苑の再開発により、歴史ある景色が一変しようとしている神宮球場とその近隣。ノンフィクション作家として、また、いちファンとして、数々のヤクルト球団関係の著書を記してきた長谷川晶一さんが、著書『神宮球場 100年物語』の一節を通して、「聖地」神宮球場について熱く語ります。
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スター選手が引退する歴史的な瞬間
担当編集者(以下、編集):「神宮球場で一番ホームランを打った男」池山隆寛さんにインタビューした際の一節を読んでいただきました。池山選手引退試合のときに長谷川さんが感じたことを書かれているわけですが、この感想を池山さんに伝えたとき、ものすごく良い表情していたのではないかと思うんですが、いかがでしたか?
長谷川晶一さん(以下、長谷川):現役時代の池山選手の勇姿、若い頃からスター街道をまっしぐらに駆け抜けていた全盛期をずっと見てきた僕にとっては初めての、スター選手が引退する歴史的な瞬間に立ち会えるという興奮と、寂しさとが入り交じった、忘れられない一日でした。
ここにも書いたように、個人的な体感として、神宮球場が過去一番混んでいた、ごった返していたっていうことと、あの異様な熱気が今でも忘れられなくて。だからこの試合を「最も熱い日」と表現したんです。
その思いを池山さんに直接お伝えするというのは、もはやインタビューじゃなくて、いちファンとして感想と感謝を伝えるっていう感じ。取材ではない感じでしたね。
それを伝えた時に池山さんご自身も、あの日のことを鮮やかに記憶しているんだな、というのが言葉の端々から感じられたんです。取材ではないけれども、お伝えしてよかったな、というのはすごく思いましたね。