「中6、7日で登板したほうが力を発揮するのでは」

 スポーツ紙デスクは「石川は投げてリズムをつかむタイプです。10日以上の登板間隔を空けるより、中6、7日で先発登板させた方がパフォーマンスを発揮するように思います。派手に打ち込まれる時もあるのですが、抑えるときはきっちり抑えるので、シーズンを通じて投げ続ければ、7、8勝はできるでしょう。先発陣が強力な球団ならともかく、ヤクルトは深刻なコマ不足の状況が続いていますし、石川の起用法は検討の余地があると思います。特に甲子園やバンテリンドームなど広い球場では持ち味が発揮できるので必要な戦力です」と指摘する。

 ヤクルトの先発事情は苦しい。開幕投手を務めた奥川恭伸がファームで再調整に入り、高橋奎二も上半身のコンディション不良で戦列を離れている。石川は2勝ながら小川泰弘と共に先発陣の勝ち頭だ。故障で離脱することなく、先発で投げ続ける投手は大きな価値がある。

「自由獲得枠」で巨人入団がほぼ決まっていた

 ヤクルトに入団したことも、運命の赤い糸で結ばれていたのかもしれない。青山学院大で東都大学リーグ通算23勝をマークした2001年、プロの複数球団から石川獲得に向けてアプローチがあった。当時アマチュア野球を取材していたスポーツ紙記者が舞台裏を明かす。

「この年、ドラフト前に社会人・大学生から2名以内を獲得できる『自由獲得枠』が設置され、水面下で激しい争奪戦が繰り広げられました。中でも石川獲得に熱心だったのが巨人です。石川も入団に前向きだったので、ほぼ入団が決まりました。でもその後、巨人が高校生No.1投手と評判だった日南学園・寺原隼人(現ソフトバンク3軍投手コーチ)の1位指名に急遽方針転換して、破談になった。石川獲得には近鉄も熱心でしたが、古田敦也が正捕手を務めるヤクルトで投げたいと入団が決まりました」

 もし、石川が巨人に入団していたらどんな野球人生を歩んでいただろうか。先発投手として白星を積み重ねてきたが、絶対的エースというタイプではない。即戦力投手が外部補強で毎年のように加入する巨人投手陣の中で、ベテランになっても先発ローテーションで投げ続けられたとは想像しづらい。ヤクルトに入団したからこそ、息長く活躍できた側面は間違いなくあるだろう。

 ヤクルトを取材するスポーツ紙記者は、チームの若手投手たちの伸び悩みに歯がゆさを感じるという。

「身近に最高のお手本がいるのだから、もっと参考にしてほしいです。身体能力が高いと言えないのに、なぜ45歳まで第一線で投げ続けられるのか、投手としてのタイプは違うかもしれませんが、グラウンド外の過ごし方を含めて勉強になることはたくさんあるはずです。今のままでは若手はいつまでたっても追いつかないですよ」

 石川は通算200勝の大記録まで残り12勝。山本昌(元中日)のように50歳になって現役で投げていても不思議ではないから、記録達成の可能性はある。チームは最下位に低迷するが、「小さな巨人」が希望の星だ。

(今川秀悟)

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