
せっかくなので「カミワタシの儀式を」
さて時間を戻して、さきほどの宴の席。この町の社中代表がいらっしゃり、「今日はせっかくなのでぜひカミワタシの儀式が行われる本殿に入って見ていってください」とおっしゃる。1年ぶりに社殿から神輿に乗って一日中町を練り歩いた神様が、祭りの最後にお社に戻られるその儀式のことです。
え? そんな場によそ者の私が、しかも女性の私が入れていただいても???と戸惑っていると「いいのです。歴史的な日になってもいい。私たちがどんなことを受け継いでいるのか見ていってほしい」とおっしゃる。話はつけてあるからと。
というわけで、祭りのクライマックス、私は何人かの方々と一緒に社殿の隅に座っていました。わお。
大津神社の神輿は、小神輿、中神輿、大神輿と三つあります。担ぎ手は厄年の男衆たち。その神輿たちは下の広場で神社に帰るのを嫌がるようにしばらくとどまっているのですが、意を決したように一気に坂道を駆け上がり、社殿に走り込んできます。
社殿では宮司とともに各家の家紋が染め抜かれた裃を身につけた年寄りたちが、今か今かと落ち着かない様子で待ち構えます。何人かの人は棒と棒の間に白い布を張ったものを持ち、昔の医者がつけるような白のサラシでできたマスクを頭にかけています。
と、その時、急に参道と社殿が慌ただしい雰囲気に包まれました。
守り抜かれてきた大切な祭り
まず獅子とお付きの者が走り込んできました。獅子は社殿の入り口で神輿を守るように立ちはだかり、体を大きく震わせています。その横ではお付きの者が、波打った拍子木のようなものをこすり合わせて音を出し緊張感が高まります。そこへ、白装束にわらじを履いた青年たちに担がれた神輿がなだれ込んできました。
ダダダダダダダダーーーーッ。
すぐさま、布で口を覆い、幕を持った裃姿の年寄りたちが神輿の周りを取り囲み、神輿から降りられる神様を、幕を震わせながら隠します。
おおおおおおおおと低い声を出しながら一気に地に顔をこすり付けるように平伏する神輿を担いてきた青年たち。誰も神様が戻られる姿を見てはならないのです。