元NHKアナウンサーの牛田茉友氏(撮影/AERA編集部・上田耕司)

 順風満帆な船出かと思いきや、NHK関係者が舞台裏をこう話す。

「NHKの上層部では非常に困ったことだと怒り心頭ですよ。『日曜討論』というのはNHKの看板番組なんです。しかも、政治の番組で、公正中立の立場のキャスターを務めていて、直前まで番組に出演していたのに、いきなり次の日に退職願を出すなんて業界のルール違反だと」

 そして、こう続ける。

「彼女はスカウトされて、すぐに決断した。事前に何の相談もなく、とんでもない話だという声が出ています。『日曜討論』というのはそういう番組なのかと。普通は退職する半年前、1年前に職場に報告し、まず、番組を降板してから選挙に立候補するものなんです。それが、突然辞めたものだから、番組もドタバタしているみたいですよ」(NHK関係者)

 街頭演説デビューの4月26日、東京・原宿駅近くでは、こうスピーチした。

「私、16年間アナウンサーとして働いてまいりました。社会を動かす力を信じてやってまいりました。しかし、ニュースで伝えるだけではどうしても解決できない制度の壁、声なき声に触れてきました。伝えることだけではなくて、変えることにかかわりたい。それが今、ここに立っている原点です」

「スーパーに行くとお米も高い。5キロ4000円を超えています。もやしも高い。そんな中で年収103万円の壁、178万円まで引き上げます。ガソリン税も減税。そして電気代の負担も軽減するよう議論を進めてまいります。右でも左でもない。誰でもいいからこの問題を解決してほしいという国民のみなさまの声に耳を傾けて、『対立より解決』を提案していきます」

牛田氏を直撃

 筆者は、演説カーから降りてきた牛田氏を直撃。

 まず、名刺交換をさせてもらうと、 

「今、できたての名刺でございまして、牛田茉友です」

 と、ういういしい感じの挨拶。出馬をよく思い切りましたねと言うと、

「すごい勢いで決めてしまいました。頑張ります」

 と笑顔だった。

 前出の城本氏はこう言う。

「牛田さんがこれからどれだけ浸透していけるか。国民民主にとっては、東京で2候補を出すというのは冒険ですが、今後の国民民主の趨勢を占う選挙になると思います。ただし、これまでも元アナウンサーという知名度だけで、政治家になってからろくな仕事もできない人たちがごまんといたから。政治家としてやっていくのはそんなに甘くないですよ。彼女も、仮に当選したとしても、そこから先、油断したら大失敗しかねない。そうならないように努力してほしいですね」

 はたして、NHKアナウンサーを退職した決断が吉と出るのか。

(AERA編集部・上田耕司)
 

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