■親が学ぶ姿勢を見せる
小学校4年生の娘を持つ神奈川県に住む女性(43)は子どもが塾で上のクラスに行きたいと言い、必死で応援していたのに、最近は全然やる気がなく、「本人がやりたいと言ったのに、なんで私が頑張っているの、とふと疑問に思った」と話す。
前出の岩田さんは子どもの目標がいつの間にか親の目標にすり替わっていることはよくあると語る。
「子どものために自分が頑張りすぎていると思ったら、自分は運転席に乗っているのか、助手席に乗っているのかをあらためて考えてみる必要があります。助手席から指示を出しすぎれば、運転をする子どもが自分の意思決定ができなくなってしまいます。ずっと指示をされていると、考えなくなりますし、考えちゃいけないと思うようになります。あくまで頼られたらサポートするという意識が大事です」
多くの保護者は「自ら学ぶ子に育ってほしい」と口にするが、自ら学び、新たな時代を生き抜く力をつけるには保護者自身の考え方を転換していく必要があると岩田さんは言う。
「大人は指示を忠実に遂行できる優秀な労働者を育てようとしてしまいがちです。しかし、これからはむしろ時代を開く経営者のようなマインドを持った子どもを育てていく姿勢が求められるのではないでしょうか」
クラスの半数以上が中学受験をするという神奈川県内の小学校に勤務する40代の女性教諭は、子どもが主体的に学習するようになるには保護者が学ぶ姿をみせることが重要だと語る。
「子どもたちに『先生は家でめちゃくちゃ勉強した上で授業をしているんだよ!』と言うと、『大人なのに勉強するの?』といった反応をする子がいました。子どもの自ら学び続ける姿勢を育てるには、保護者自身が学ぶ背中をみせることがとても大切だと感じます」
(教育ライター・佐藤智)
※AERA 2023年4月24日号より抜粋