AERAが2025年3月実施したアンケートから

無償で働かせるのはおかしい

 断ると、周囲から白い目で見られるのではないか、浮いてしまうのではないか、という不安がある。

「教員は部活動顧問はやらざるを得ないという空気があります」(同)

 顧問としての業務がほぼ“ボランティア”になる実情も不満だ。休日に部活動を行えば「部活動手当」が支給されるが、1時間約1千円の薄給だ。他校に練習試合に出かけ、1日拘束されても最大3時間分しか手当は出ない。自治体の部活動のガイドラインが休日の活動を「3時間程度」と定めているためだ。

 教員のなかには自らの「趣味」のように部活動顧問を務める人もいるという。

「僕はそういうかかわり方は、はっきりと否定したい。部活動顧問は『趣味』でもなく、ボランティアでもなく、『仕事』です。ほぼ無償で働かせるのはどう考えてもおかしい(同)

部活動は「時間外勤務」

 教員の勤務時間と部活動は密接に関係する。地方公務員の勤務時間は7時間45分だが、教員勤務実態調査(文部部科学省が実施/2022年度)によると、中学校教員(教諭)の平均「在校等時間」は11時間1分。部活動の活動日数が多いほど在校等時間は長く、活動日数が週0日の場合は10時間12分(平日1日)だが、7日の場合は12時間4分(同)だった。

 部活動にかける時間は、法的な勤務時間には含まれず、教員が「自主的」に行う時間外勤務として扱われる。公立学校の教員は「教職調整額」を除き、部活動業務に対する残業代は支払われない決まりだったが、政府は今年2月、教職調整額を現在の月給の4%から段階的に10%へ引き上げる給特法の改正案を閣議決定した。

 だが、部活動を「労働問題」の視点から研究する早稲田大学スポーツ科学学術院の中澤篤史教授は、「実際の先生の労働時間からすると、10%では全く足りません」と指摘する。

「時給」は最低賃金を下回る

 休日に部活動業務(3時間程度)を行うと、3000円(都立学校の場合)の「特殊業務手当(部活動手当)」が支給されるが、「時給換算すると都の最低賃金を下回る水準だ」(中澤教授)。

 加えて部活動は「教育課程外」にあたり、顧問が過労で倒れたとしても、十分な補償を受けられない恐れもある。

「一般労働者が職務で疾病を患ったり、死亡した場合、労働災害補償を申請しますが、部活動の場合、どこまでが教員の『公務』なのか、裁判で争われたケースもあります」(同)

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