
妻が「部活未亡人」化
中部地方の中学校教員・ダイスケさん(仮名、40代)は、2児の父だ。部活動のために、一時期家族を犠牲にしていた実感がある。
「私の妻は、いわゆる『部活未亡人』状態でした」
ダイスケさんは書道や美術といった文化部出身。だが、割り振られた部活動は剣道や野球、テニスなど運動部が多かった。平日は朝から晩まで職場にいて、週末は部活動でつぶれた。
「部活で疲れて帰ってくる毎日でストレスが溜まり、家族にあたってしまうこともありました。休日も家族とは出かけられず、部活に行くほかなかった」(ダイスケさん)
ほとんど家にいることができず、自分の子どもの面倒も見られず、育児は妻にワンオペ化していた。妻にとっては「つらい毎日」だったと思う。
「限界」を感じ、ダイスケさんは10年ほど前に部活顧問を辞めた。
「お互いに教員であればまた違うのかもしれませんが、こんな働き方は理解しがたいですよね。部活をきっかけに離婚してしまうケースもあるようです」(同)
「家族が精神を病んだ」ケースも
アンケートでも、部活動で家庭を犠牲にしているという教員の声は少なくない。
「土曜日は子どもを保育園や学童保育に預けることになる。子連れで部活の指導をすることもあるが、教員の世界では別に珍しいことではない。子どもに習い事をさせたくても、多忙で断念することが多い」(大阪府、40代、女性)
「土日に休みが全く取れない。部活動手当は本当に乏しい。家族には愛想をつかされ、離婚秒読み」(千葉県、50代、女性)
「家庭を顧みる時間がなく、家族が精神を病んだ」(東京都、60代以上、男性)
「平日は帰宅が遅く、休日も出勤。家族と疎遠になった」(福岡県、60代以上、男性)
「休日は1日中、練習試合。その後、18時に学校戻り、自分の仕事をしたりするので、プライベートの時間は全くない。家庭が崩壊する」(三重県、30代、女性)
「自分の時間を失い、パートナーを探せない」(山形県、40代、男性)
「部活動で運動場を駆けずりまわり、納得いく授業を準備できない。私生活に割ける時間はほとんどない。健全な状態ではないと思います」
先のダイスケさんは、実感を込めてこう話す。
「部活顧問を引き受けたことで結婚の機会を失った教員もいると思います。部活によって教員は人生を奪われる。それが実感です」
(AERA編集部・米倉昭仁)