こんな犯罪、ほかにあるだろうか? 加害者のための「広告」が上位に検索表示される犯罪が、ほかにあるのだろうか。「泥棒してしまった加害者の方へ」「無銭飲食したら被害届が出されてしまった方へ」「暴言浴びせたら被害届が出されたけど、どうしたら取り下げてもらえる?」なんて文言、成立するだろうか? それが痴漢では成立する。それがこの国の現実なのだ。「痴漢してしまったけど、俺の人生、これからどうなるの?」という不安を抱えている男が多く、それが弁護士の商売になっているという、ここはいったいどういう社会なのだろう。
八代亜紀さんが生前、20代のころに同棲相手にポラロイドカメラで撮影されたヌード写真付きCDの販売が始まったという。反対運動も起き、大手レコード店での流通はないというが、「八代亜紀さんが所属したレコード会社が倒産した際に写真を買い取った」と言う男が経営する会社は、CD発売を強行した。
女を躊躇なく性的に眺め、娯楽のように楽しみ、様々な意味で売買し、悪びれず、「そういうものだ」と男たちは馴れ合う。生きていても、亡くなった後も、女は性的に男に使われ続ける。だけれど、なぜか、法的な権利を主張し大きな顔でいられるのは、この国では、女のほうではない。女に向けられる無数の暴力的な点が、線になり、大きな面となり、そしてこの国を生きる女たちを不安に包んでいるような……そんな気持ちになる。千葉に向かう電車で痴漢にあった女の子の涙と、八代亜紀さんのヌード写真の販売に抗議する女たちの痛みは、同じものだから。