実は小麦を食べて体調不良になっても、小麦アレルギーであるケースはさほど多くはない。

 「小麦製品を食べるとお腹が痛くなる、関節が痛くなるなど、さまざまな症状を訴えて受診する患者さんがいますが、じんましん以外のこうした症状を訴える人に検査をすると、アレルギーではないことが多いです」(福冨医師)

 医学的には先に紹介したIgE抗体検査が陰性、つまり免疫反応が確認できなければ、アレルギーではないということになる。

小麦アレルギーと似た病気も

 「小麦を食べて体調が悪くなることが続くと、小麦アレルギーの発症を疑うかもしれませんが、食物アレルギーの医学的な定義は、一般的に認識されている意味合いよりも限られているのです。検査で免疫反応が確認できなかった場合は『非アレルギー性小麦過敏反応』と呼びます」(福冨医師)

 小麦に含まれるグルテンに対して異常な免疫反応が生じ、腹痛や下痢などの症状が表れる「セリアック病」と呼ばれる自己免疫疾患があるが、日本人にはまれだ。

 セリアック病でも小麦アレルギーでもないのに、小麦製品を摂取したあとに腹痛や下痢などの消化器症状、倦怠感、頭痛、関節痛、咳といった症状を訴えるケースがあり、非アレルギー性小麦過敏反応の1つとして「非セリアック・グルテン過敏症」と呼ばれている。

 「当院を受診する患者さんをみても、『非セリアック・グルテン過敏症』に当てはまる方が増えています」と福冨医師は言う。

 「小麦を食べなくても、栄養面の問題が起きることはありません。重症のアレルギー患者さんほど神経質になる必要はありませんが、小麦製品を食べて体調不良を起こすようであれば、なるべく除去したり、食べる頻度を減らしたりすることをおすすめします」

(取材・文/中寺暁子)

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