
脂がのった時期にベンチを温めている岸田
岸田は報徳学園の時には高校日本代表に選ばれ、U-18アジア選手権で同学年の岡本和真(巨人)とクリーンアップを組んだ。社会人野球・大阪ガスに進み、2018年のドラフト2位で入団。なかなか1軍に定着できなかったが、他球団からの評価が高い選手だった。
かつてセ・リーグ球団の編成担当を務めていた関係者は「ファームで試合に出ている時から、いい捕手だなあと思って岸田を見ていました。肩がすごいとか打撃センスが際立つとかの派手なタイプではないですが、配球に意図が見える捕手で、打撃も広角に打てる。総合力の高い選手で1軍でも十分に通用すると感じました」と振り返る。
昨年は自己最多の88試合に出場し、今年3月には侍ジャパンに初めて選ばれ、オランダとの強化試合にも出場した。プロ8年目の28歳。捕手として脂が乗りきる時期なのに、今年は再びベンチを温める機会が増えている。
パ・リーグ球団の首脳陣は「ウチが今、一番欲しい選手です」と切り出して続ける。
「守備と打力のバランスが取れた捕手ですが、今までは殻を破りきれなかった。昨年リーグ優勝を飾ったことで、自信がついたと思います。他球団のコーチとも、『岸田はいい捕手だよね』と話題になりました。甲斐が故障などで長期離脱しない限り、巨人で岸田がメインで起用されることは考えづらい。今の状況が続けば、トレードで獲得を申し込む球団はあると思いますよ」

出場機会求めて巨人を出た炭谷
巨人では過去に、実績のある捕手が出場機会を求めてトレード移籍したケースがある。炭谷銀仁朗(現西武)が18年オフに西武からFAで加入したが、正捕手の大城や小林がいたため、出場機会が少なかった。当時の原辰徳監督と炭谷は話し合いを重ね、21年のシーズン途中の7月に、金銭トレードで楽天に移籍した。
甲斐の加入で、序列が下がる形になった岸田はベンチで何を思うか。長丁場のペナントレースを考えると甲斐一人だけでは戦えないとはいえ、岸田が試合で活躍するチャンスは少なくなる。トレードの期限は7月31日だ。
(今川秀悟)