野手では中田翔中日)の名前が真っ先に上がる。一昨年のオフには巨人との契約が残っていながら自由契約を選択して中日に移籍。しかし昨年は開幕当初こそ持ち味の勝負強さを見せていたものの、徐々に調子を落として46安打、4本塁打、21打点、打率.217という寂しい数字に終わった。オフには体への負担を減らすために約15キロの減量に成功。ここまで先発出場4試合、代打での出場1試合でホームランはまだ出ていないが、4安打中2本がツーベースで打点も2とまずまずのスタートを切っている。ただ怪我で出遅れている新外国人のボスラーが復帰するとさらに出番は少なくなることが考えられるだけに、レギュラー復帰にはさらにインパクトのある活躍が必要になりそうだ。

 ここまで挙げた3人は悪くない滑り出しとなっているが、一方で苦しい状況が続いている選手も少なくない。中田の同僚である大島洋平(中日)もここまでスタメン出場はわずか1試合で、代打でも結果を残せずノーヒットが続いている。このままの調子が続くと、二軍降格という可能性も出てきそうだ。セ・リーグの野手では広島のリーグ3連覇を支えた田中広輔も苦しい立場となっている。小園海斗と矢野雅哉の台頭もあってスタメン出場の機会が減り、今年は開幕から二軍暮らしが続いているのだ。一昨年6本塁打を放ったようなパンチ力を見せて何とか一軍昇格を目指したい。

 パ・リーグでは美馬学(ロッテ)、武田翔太(ソフトバンク)という実績のある先発投手2人が正念場を迎えているが、ともに二軍調整が続いている。特に美馬は自身も昨年の契約更改で自由契約を覚悟したと話しており、今年は結果が求められることは間違いない。また武田はトミー・ジョン手術明けということで多少の猶予はあるものの、戦力として使えるという点をある程度見せる必要はあるだろう。

 こうして見ると苦しいスタートとなっている選手の方が多いように見えるが、長いシーズンではベテランの力が必要な場面が必ずあることも確かだ。その時のために何とか良い状態をキープして、鮮やかな復活を遂げる選手が出てくることを期待したい。

(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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