
「それに、ウチのマンションでは子どもを有名私立に通わせているケースも多く、そういった家庭の奥様方は私に対して口々にプレッシャーをかけてきます。『河島さんのお宅も、そろそろお子さんが欲しくはないの? 生まれたら、どこの学校に通わせるつもり?』って。悪気はないのでしょうが、少なくとも小学校までは公立で十分だと思っている私の本心なんて、とても口に出せる状況ではありません」
安直に高額ローンを組むと後悔しかねない
河島さん夫婦の苦悩ぶりについて伝えると、家計の見直し相談センター代表でファイナンシャルプランナーの藤川太さんはこう指摘する。
「住む場所によって生活が大きく変わりうるということは、住み替えを決める前からあらかじめ認識しておいたほうがいいでしょう。それまでとは異なるコミュニティーの中で暮らすことになれば、おのずと自分たちの生活スタイルにも影響が生じるものです。いったん贅沢な暮らしを始めてしまうと、家計が多少苦しい程度で生活水準を落とすことは容易ではありません」
河島さん夫婦の場合、ローンの返済自体には困っておらず、「なかなか貯蓄ができない」といった程度の危機感にとどまっているだけに、従来の生活スタイルに戻すのは難しそうだ。そもそも、安直に高額な住宅ローンを組んでしまうこと自体も考えものだと藤川さんは説く。
「二人の収入が現状のまま続いていくことを前提にした金額の融資を受けているわけですから、出産・育児のようなイベントが発生すると、家計が大きく圧迫されかねません。実際に私がお客様から相談を受けた際にも、高収入が続く前提でローンを組むのはやめたほうがいいと忠告したことが多々あります」
先述したように、恵梨香さんは先々に子どもが生まれた場合、その子の進路が「小中高私立」の一択になりそうなことについて危惧していた。だが、河島さん夫婦に対しては酷な言及になってしまうが、実は高額な住宅ローンを組んでしまった以上、子どもを生むことにも慎重にならざるをえないのが現実である。