まもなくゴールデンウィーク。どこへ行こうかと悩むあなたへオススメしたいのが西日本のミュージアム。個性的な企画や熱いコピーに心揺さぶられるのは間違いない!AERA 2023年4月24日号より紹介する。
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「『フン』ではなく、『うんこ』です」
そうキッパリと言い切るのは、兵庫県にある伊丹市昆虫館で5月8日まで開催中の「むしのうんこ展」を企画開催する学芸員、角正(かくまさ)美雪さん。虫は糞(フン)と呼ぶべきところだが、角正さんは、人間も虫も同じ生きものという観点で、「うんこ」と呼んでいる。
2004年に1回目を開催して話題を呼び、今年で5回目となる同展。キャッチコピーは「みんな、うんこをして生きている」。うんこを幾何学的に並べたチラシの北欧風デザインがこれまたカワイイ。なにしろ、「うんこ」はパワーワードだ。その証拠に大きな話題となった「うんこドリル」シリーズは、17年3月発売以降、累計発行部数1千万部と爆発的に売れている。
3歳半の娘と来場した女性は、「子どもがうんこに興味を持つのは、フロイトのいう『肛門期』だからでしょうか」と興味津々。
■広がるうんこの可能性
虫のうんこは、アジアの国ではお茶や漢方薬に使われる。柑橘(かんきつ)系の葉を食べるアゲハチョウの幼虫のうんこは、ほんのりみかんの匂いがするそうだ。兵庫県で生きもの調査会社を運営する女性はこう語る。
「うんこは、みんな大好きなロマンあふれる素材。桜の葉を食べる蛾(が)の幼虫のうんこを煮だした汁でもち米を炊いたら、桜餅ができる。しかもおいしい!」
こんなふうに虫のうんこは、さまざまに役立つ可能性に満ちている。そこで、同展の関連イベント「むしのうんこ染め体験」に参加してみた。元館長の後北峰之さんが独自開発した全国初の染めの手法だ。
ツダナナフシという15センチほどの虫の乾燥させたうんこ150グラムをずんどう鍋に入れて数回煮だし、濾した湯に酢酸アルミなどの媒染剤を入れてスカーフを染めていく。これだけのうんこを集めるのは簡単ではなく、コロナ禍もあって今年7年ぶりに開催した。