
ふだん理知的でもの静かでお堅いイメージの学芸員だが、愛あふれるラップのパフォーマンスに観客も大喜び。「見たかったのに見られなかった」「次はいつですか?」というコメントが殺到した。観客は10代から70代と幅広く、今まで美術館に来たことがないという人も多かった。現在、第2回の開催を模索中だ。
5月14日まで開催中の兵庫県立美術館の特別展「恐竜図鑑-失われた世界の想像/創造」。恐竜の絵や造形、漫画などに着目し、恐竜の姿の変遷を紹介している。キャッチコピーは、「イケてた頃の俺。」だ。
恐竜を「俺」と一人称で表現するあたり、はるか昔の骨だけの存在ではなく、いきなり距離を縮めてくる友達みたいに、親近感を醸す意図だろうか。企画とコピーを担当した、西洋近代美術を専門とする学芸員(3月当時)の岡本弘毅(こうき)さんに聞いた。
「恐竜が描かれだしたのは1830年頃からで、ロマン主義絵画の中で恐竜がどう扱われ変わっていったのかを企画テーマにしました。コピーは第2候補が『対峙せよ。』で、チラシには両方使いました」
そう語る岡本さんは、子どもの頃から大の恐竜好き。大切にしていた図鑑の絵の実物と対峙した時の感動が、笑顔から漏れあふれている。

■キャッチコピーが誘導
岡本さんは、17年7月から同館と上野の森美術館(東京都台東区)で開催された「怖い絵」展の企画とチラシのキャッチコピー「どうして。」なども担当しており、「怖い絵」展は68万人超を動員した。
「やっぱり担当学芸員が一番内容をわかっているはずなので、コピーは自分でつけたいですね」(岡本さん)
20~30代の来場者らに聞いてみると、「電車の吊り広告で見て、面白いコピーだなと思って来ました」「ポスターを見て好奇心が湧きました」と、コピーに強く誘導された模様。
他にも、「恐ろしいほど美しい」(「幕末土佐の天才絵師 絵金」。4月22日から6月18日まで大阪市・あべのハルカス美術館)、「コノセカイハ、ドクダラケ。」(「毒」。5月28日まで大阪市立自然史博物館ネイチャーホール)など、学芸員の熱い思いが短いキャッチコピーに凝縮されたユニークな展覧会がめじろ押し。旅行がてら、西のミュージアムを回ってみてはいかがだろう。(ライター・西元まり)
※AERA 2023年4月24日号