AERA 2025年3月31日号より

「その気持ち、わかりますよ」

 明るい声でそう共感してくれたのは、都内に住むキャリアカウンセラーの女性(52)だ。大手企業を渡り歩いたあとに独立し、フリーランスとして働いている。仕事はばりばりこなすほうだが、プライベートはからっきしで、お金関係で「損をする」ことが多いという。

「医療費を年間10万円以上払っているので控除申請すれば少しはキャッシュバックされるはずですが、やっていません。買い物でたまったポイントも気づくと失効しています。会社の福利厚生で習い事をはじめたものの、補助金の申請をせず結局全額自腹で通ったこともありますよ」

 ふるさと納税はやっていないが、4人に1人が申請していないことについては「驚く数字ではない」という。

「宝くじが当たっても引き換えない人が相当数いると聞いたこともあります。結局面倒なんじゃないでしょうか」

 わかっているのに、なぜかできない。「怠惰な自分」から抜け出せない。そんな悩みを持つ人は他にもいるようで、アエラが実施したアンケートにもさまざまなエピソードが寄せられた。

 記者と同じく、コロナ禍が過ぎてから自身の怠惰な一面に気づいたというのは、京都市に住む女性(40)だ。かつては無趣味だったが、自粛期間を経てボランティア団体を立ち上げ、ダンスも始めた。

「やることが増えたからか、助成金の申請などを締め切りまでずるずる放置してしまうようになりました。該当するものが15件あったとしても、10件しか申請できないような感じです」

「脳の問題?」と不安に

 他にも、クレジットカードを一本化したいと思いながらもできていなかったり、LINEの返信をためてしまったり。どこからともなく怠惰が顔を出す。

 手続きを放置しがちだという愛知県の女性(64)は、そんな自分を振り返って「時々、脳や発達障害の問題かなと思ったりもします」と話す。今は取り返しのつかない問題は起きていなくても、いつか大問題につながるかもしれない。自分の怠惰をどの程度深刻に捉えればいいのか悩む声はほかにも寄せられた。

「ふるさと納税の手続きをしないからといって、必ずしも発達障害というわけではありません」

 そう説明するのは、パークサイド日比谷クリニック院長の立川秀樹(たつかわひでき)医師だ。それではなぜ手続きをつい怠ってしまう人がいるのか。原因の一つに、「後回し」の問題があるという。

次のページ 「怠け」の境界線はどこ