
成功した投手に共通する「制球力」
1番から9番まで本塁打を打てる打者がそろっているメジャーでは、力でねじ伏せる投球は難しい。これまで成功した日本人投手に共通するのは、制球力の高さだ。メジャーリーガーをマネジメントする代理人はこう語る。
「狙った場所に投げられるコマンド力が日本人投手は非常に高い。ダルビッシュ有、田中将大がその代表例です。黒田博樹も広島では球威に定評がありましたが、メジャーで制球力を磨いてドジャース、ヤンキースで活躍しました。パワーピッチャーと形容される菊池も、制球力が上がったことで投球が安定した。裏を返せば、制球力がアバウトな投手は厳しい。あと、絶対的な変化球がないと抑えきれません。多彩な変化球を持っているけどすべての球種が60点のタイプより、球種が少なくても打者を抑える絶対的な変化球を持っている投手の方が成功できると思います」
メジャー挑戦の先駆者である野茂英雄は代表例と言えるだろう。「トルネード投法」と形容された豪快な投球フォームから繰り出す直球、フォークで三振の山を築いたが、基盤となったのは制球力の良さだった。日本で対戦した打者が振り返る。
「野茂さんの場合、フォークと言っても、その変化は何種類もありました。スライド気味に落ちたり、真っすぐ落ちたり、シュートしながら沈んだり。それもストライクを取る時と、追い込んでから空振りを取る場面で落差も変えていました」
レッドソックス時代に守護神としてワールドチャンピオンに輝いた上原浩治も、直球は決して速い部類ではなかったが、変幻自在に落ちるフォークと抜群の制球力を武器にメジャーで9年間プレーし、95セーブ81ホールドをマークした。
上沢と同じ弱みがある小笠原
一方、日本ハムから23年オフにポスティングシステムを利用してレイズとマイナー契約を結んだ上沢直之(現ソフトバンク)は、オープン戦で防御率13.03と結果を残せず、開幕前にレッドソックスに金銭トレードで移籍したが、メジャー登板は救援での2試合のみ。5月8日にマイナーに降格し、3Aで13試合登板して3勝3敗、防御率6.54とアピールできず、日本に帰国した。
「上沢の場合は絶対的な変化球がない上に、制球力が際立って良いわけではなかった。直球も球質に特徴があるわけではないので、米国の打者からすると打ちごろになってしまう。今の小笠原にも同じことが言えます。中日時代の武器だったカーブを多用するか、他の球種を磨くか。今のままではメジャーで通用するかというと厳しい。新たな投球スタイルを構築する覚悟が必要だと思います」
今永もメジャーに挑戦した当初は、ここまでの活躍をすると見られていなかった。小笠原、青柳も課題を克服して、メジャーの舞台で下馬評をくつがえすような活躍をみせることができるだろうか。
(今川秀悟)

