首都圏の中学受験界で高い人気を誇る東洋英和女学院中学部・高等部(東京都港区)。女性の生き方のロールモデルがたくさんいるという(写真:東洋英和女学院提供)
この記事の写真をすべて見る

 30年前と比べると男子は3割、女子は5割程度にまで別学は減り、共学化が加速している。新しい教育や進学率の高さを共学化の魅力としてアピールする学校も増える中、別学を維持し続ける高校が強みとする教育とは。AERA 2025年3月17日号より。

【図表を見る】男女別学が減ってきている

*  *  *

 別学の大半を占める私立校で共学化が進む一方で、公立高校の男女別学も減っている。現在は埼玉や群馬、栃木、鹿児島などに40校程度しかなく、全体の約1%だ。男女別学の公立高校が全国で最も多い埼玉県でも、浦和や浦和第一女子といった伝統校を中心に12校ある県立の男女別学高校の共学化が進みつつある。

 果たして女子校はなくなってしまうのだろうか。

 武庫川女子大学教育総合研究所(兵庫県)教授の安東由則さんは「トップ校や伝統校は残っても、全体として減少傾向は変わらない」とした上で、「それでも別学には別学のよさがあり、維持するべきだという考えも根強くある」と話す。

「女子校では、女性はこうあるべきだといった型に自分をはめたり、異性の目を気にしながら行動したりする必要がないため、自分らしくやりたいことができると言われます。行事や委員会活動などを通じてリーダーシップが育成されやすいというメリットもあります」

 こうした女子校の強みを強調し、別学を維持することで受験者数が上向いてきた女子校もある。昨年創立140年を迎えた東洋英和女学院中学部・高等部(東京都港区)だ。石澤友康部長は「今のところ、共学化の予定はない」と言い切る。

「男性がいれば男性がやることになるだろう力仕事も、集団のリーダーもこの学校ではすべて女性がやります。性別に遠慮することなく、ごく自然に女性同士で支え合い、高め合う姿がさまざまな場面で見られます」

 例えば、中学3年以上の有志の生徒および卒業生たちが参加する5泊6日の「野尻キャンプ」が特徴的だという。90年近く続く伝統行事で、毎年夏になると、長野県信濃町の野尻湖で6日間にわたって遠泳やボートなどのプログラムに取り組む。

次のページ
身近にロールモデル