
身近にロールモデル
「もしここに男性がいたら、オールでボートをこぐのは男性の役割になりがちです。男は強くあるべき、女は控えめにというバイアスが自然に働いてしまうからです。でも女性しかいなければそんな考えは全く浮かびません。常に自分たちでなんとかしようとするため、自立した女性が育ちやすいのです」
女性の生き方が多様化するなかで、考え方や行動の規範になるロールモデルとなる存在がたくさんいることも女子校の良さだという。
「生徒たちにはそれぞれたくさんの『推し』がいます。『推し』は憧れであり、目標であり、共に励まし合う仲間でもある。思春期に手本にしたい人物が身近にたくさんいることで、将来像を描きやすくなります」
とは言え、少子化の流れは例外なく伝統校にも影響する。生徒、保護者に進学先として選ばれるためには、特色を際だたせていくことが求められるだろう。
「子どもが少ないことを逆手に取れば、子どもの個性に合わせた質の高い教育を届けられる時代になったとも言えます。だからこそ女子校が積み上げてきた特徴のある伝統や雰囲気は何にも代えがたい。私たちは北極星のようにいつまでもここにあり続けることが使命だと考えています」と、石澤部長は語る。
1870年に創設された歴史ある伝統校、フェリス女学院中学・高校(横浜市)も創設以来「女性の自由・自立」を追求してきた別学だ。フェリス女学院大学の小檜山ルイ学長は進む共学化について、どのように考えているのだろうか。
「共学という環境なら男女平等と言えるのかというと、そうではありません。共学化して男性と同じように学ぶことが女性の自立につながるかというとそれも違う」と、小檜山学長。
共学化進んでも最下位
確かに共学化は進んできても、日本の「男女平等」の達成率は、先進主要国のなかで最下位クラスのままという現状がある。
「共学化を頭から拒絶するわけではありません。ただ、うちの場合は女子校のイメージが強すぎて共学化は賢い選択とは言えないと考えています。女性を尊重する、女性が中心の学校として生き残る方策を考えていくほうが賢い選択かもしれません」 そう話す、小檜山学長は同中学・高校の卒業生だ。去年から初の女性学長を務めており、副学長にも女性2人を選んだ。
「女子校の出身者は社会に出てリーダーシップをとることがわりと多い。私たちがそのロールモデルとなってリーダーのあり方を示せたら」(小檜山学長)
何を学び、どういう人材を育てるのか。先行きの不透明感が増す中、別学、共学それぞれの学校の挑戦が続く。(ライター・浴野朝香)
※AERA 2025年3月17日号より抜粋

