AERA 2025年3月17日号より

 神戸大学の教育学部をあきらめて私立大に入学した男性は2年生のとき、経営の勉強が俄然面白くなった。就職して3年、仕事で認められるようになった頃には「敗北」へのわだかまりは消えていたという。

受験の時のつらさがあったからこそ、社会に出ても耐えられたし、がんばれた。いまでは後悔はまったくしていないです」

親が先に覚悟を決める

 広島大学の心理学科から「逃げた」女性は、子どもの手が離れ、50歳を過ぎてから心理学への学びを深め、心理士になった。

「子どもには自分がやりたい学問をやってほしいという気持ちがすごくありました。希望する学部に行けず悩んでいた息子を、仏教に興味を持ったことをきっかけに『仏教学部への編入』というアドバイスでうまく導けたことは、自分の失敗の経験が生きたと感じています」

 大学受験に失敗した子に対して、親ができること。前出の小川さんは、第1志望が叶わなかったときに本人が絶対にしてはいけないのは、結果が自分の価値を決めたと思い込み、自分をあきらめてしまうことだという。「そして親は、子どもにそう思わせてはいけない」とも話す。

「『残念な結果が出ても、あなたの持っている力が変わることはないし、これからも頑張れる。自分ができることを、またここから作り上げていきなさい』というメッセージを伝えることが重要です」

 厄介なのは、大学受験失敗によって後悔や挫折感が残るのは、親も同じということだ。

「だからこそ、親の方が『信じて応援し続ける』と腹をくくることが大事です。親が『やり残した感』を持っていると、何年か後にまた『○○くんは○○大学でいいね』などと余計なことを言ってフラッシュバックさせてしまう失敗をする親はたくさんいます。まずは親の方が先に、しっかり納得して、覚悟を決めること。いちばん大切なことだと思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2025年3月17日号

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