
「後輩や裏方さんにも気配りをしていた」
これについて、菊池とかつて西武で共にプレーした球界OBが語る。
「雄星らしいなと思いましたよ。自分の投球だけを批判されたら黙っていたと思います。信頼する捕手を守りたかったのでしょう。花巻東の後輩である大谷の凄さを認めた上で、上原さん、工藤さんに対する礼節もわきまえている。あいつは仲間思いで繊細なんですよ。西武時代から先輩だけでなく、後輩や裏方さんに気配りをしていたし仲間を大切にしていました。野球で積み上げた実績が凄いだけでなく、人間的にも尊敬できます」
菊池を取材した米国メディア関係者も、「彼は試合に負けても感情的にならず、質問に丁寧に答えてくれる。大谷にとって地元の先輩である菊池が憧れの存在だったというのも理解できる。本当にナイスガイだよ」と話す。
西武時代から菊池を知るスポーツ紙記者も、「スーパースターになると近寄りがたくなるけど、雄星はいい意味で変わらない。物腰が柔らかくて誰に対しても丁寧に接します。あと、好奇心旺盛なんですよね。読書量が凄くて自分の知らない世界からも学ぼうとする。地に足がついていますし、野球以外の世界でも成功すると思います」と絶賛する。
不器用だけどコツコツ前に進むタイプ
菊池は花巻東で「高校№1左腕」として評価を高め、2009年のドラフトで6球団が1位指名で競合した。だが、西武に入団後はなかなか殻を破れなかった。初の2ケタ勝利をマークしたのはプロ7年目の16年。翌17年に最多勝(16勝)、最優秀防御率(1.97)に輝き、18年も14勝を挙げてチームのリーグ優勝に貢献すると、ポスティングシステムでメジャーに挑戦した。
米国でもすぐに結果を出せたわけではない。マリナーズからブルージェイズ、アストロズと渡り歩いたが、ブルージェイズ時代の23年に、メジャー5年目で初となる2ケタ勝利の11勝をマーク。昨年はシーズン途中でアストロズに移籍し、移籍後は10試合登板で5勝1敗、防御率2.70と安定した投球で先発の柱になった。
「雄星はウサギと亀で言えば、典型的な亀です。不器用だけどコツコツ前に進むから応援したくなる。今季からプレーの場となるエンゼルスは9年連続でプレーオフを逃すなど低迷期が続いていますが、エースとして期待が大きい。彼の全盛期はこれからだと思いますよ」(前出のスポーツ紙記者)
エンゼルスと同じロサンゼルスに拠点を置くドジャースは、昨年ワールドチャンピオンに輝き、大谷、山本由伸、佐々木朗希の様子が日本のメディアで連日報じられている。それに比べて注目度は高くないが、菊池も決して実力で劣っているわけではない。メジャー7年目の今季、どのような活躍を見せてくれるか楽しみだ。
(今川秀悟)

