キズキ共育塾の学習カウンセラー・泉さん。不登校の生徒らが多く学ぶ。泉さん自身、高校中退後にキズキ共育塾で学んだ(写真:キズキ共育塾提供)

「どの高校がいいかは人それぞれですが、例えば大学を目指すなら全日制などで通学の練習をするといいかもしれない。朝起きるのが苦手だったり、他にやりたいことがあったりするなら定時制も選択肢。カリキュラムを選んで自分のペースで学びたいなら通信制が合っているかもしれません。大切なのは、高校に行ったあとどうなりたいか。どんなサポートがあるかも調べて進学先を選ぶといいでしょう」

 不登校生徒の進学を「社会とつながる手立てのひとつ」と語るのは岩手大学の樋口くみ子准教授(社会学)だ。不登校は、学校とのつながり、社会とのつながりが弱く、細くなっている状態にある。高校進学はそのつながりを取り戻すきっかけにもなるが、つながりが再び切れると否定的経験にもなりうる。

「進学の他にも、高卒認定試験や資格取得を目指すという手もあります。進学も含めて、本人にとって続けることができ、肯定的経験を積み重ねられるような進路を選ぶのが良いでしょう」

 樋口准教授もまた、中学校時代に不登校を経験。全日制高校に進学したが、中退した。勉強の遅れはもちろん、学校に通っていれば得られたはずの経験の多くを持っていなかった。資格取得と大検(高卒認定試験)で道を切り開いたという。

多様な友人との出会い

 そんな不登校の生徒の学び直しや再スタートの場としても注目されるのが、通信制高校だ。オンラインなどを活用して単位を取得でき、一定期間のスクーリングがあるほか、日常的に通学可能でキャンパス活動に力を入れる学校もある。

 通信制高校・N高等学校2年の大杉優宙さんは中学2年の冬、起立性調節障害を発症。朝起きて学校に行くのが難しくなった。徐々に登校日数が減り、中3の夏以降はほぼ登校しなかったという。中高一貫校に通っていたが、このまま高校に進んでも進級・卒業が難しいと判断し、通信制を選んだ。系列のフリースクールであるN中等部に通い、そのままN高入学を決めた。

 N中やN高では、教科学習以外に投資やプログラミングなど様々な学びの場がある。自分の興味を追求しながら、多様なバックボーンを持つ友人たちと出会うことができたという。通学頻度は自分で選ぶことができ、入学当初は週3回、今は週5回通学するコースに所属。系列のS高も合わせて3万人超の生徒の生徒会長にも就いた。

「毎日必ず通っているわけではありません。朝絶対起きなきゃと無理をすること自体が症状を強くしていた気がします。自分と向き合いながら、自分のペースで勉強も課外活動も頑張れるいまの形が私に合っていました」

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「不登校」の言葉がない