
AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
【写真】図書館のような家の施工から引っ越しを敢行して暮らすまでの貴重な記録
本を愛する二人が共棲みするにあたって建てた“森の図書館”の建築プロセスを、設計の三井嶺氏を加えた3者の視点から「芸術新潮」誌上に連載。大幅に加筆してまとめられたのが『図書館を建てる、図書館で暮らす本のための家づくり』。図面や模型、施工途中の写真なども興味深い。どっしりとした書架に収められた本の背表紙を見ているだけで楽しめる。ちなみに現状は本書よりもさらに「進化」している。著者の橋本麻里さんと山本貴光さんに同書にかける思いを聞いた。
* * *
橋本麻里さん(52)と山本貴光さん(54)が一緒に暮らし始めたと聞いた時、二人の著書やSNSなどから本への偏愛・耽溺ぶりを知っていた私はこう思った。「え、本はどうするの?」。橋本さんが自邸“森の図書館”を建てて山本さんが合流することになったと知って、「それならいいか」と勝手に納得した。だが、実は全然良くなかったのである。
本書は「“森の図書館”を思い立ってから建築家・三井嶺氏に設計を依頼し、施工し、引っ越しを敢行して暮らす」までの記録だ。デンマークの画家ハマスホイの絵をイメージしたという写真があしらわれた表紙、たくさんの写真や図版が使われた本文と、最近では珍しいほど贅沢で美しい本に仕上がった。結果的に3300円という定価になったが、既に3版が決まった。それほどこの「図書館」に関心を持ち、かつ「いいなー!」と羨ましがっていた人たちが多かったということだろう。

訪ねてみると、ドアを開けた瞬間からどこもかしこも本だらけ。特に山本さんの書斎では、床に積まれた本が鍾乳洞の如き「書塔」を何本も形成していた。予算の許す限り本を収納できるよう作ったはずがもう近所にアパートを借り、そこにも本を収納しているというから何をかいわんや。
「本好きの人は『本屋(図書館)に住みたい』と言いますが、実際に住んでみるとどういう事態になるか。やってみたという感じです」(橋本さん)
「夜中にどさっと音がして、見に行くと塔が崩れていることはありますね。本の大きさと材質を考えて絶妙なバランスで積んであるんですが、多分すごくゆっくり移動していて、ある時突然バタッといってしまうのです」(山本さん)