試合前のフリップ芸は名物となり、ヤクルトや他球団選手を“イジる”ことも多かった。時事ネタを盛り込んで“ギリギリ”のネタを提供することもあった。ヤクルトと神宮球場という2つの特性を見極めた上で見つけた武器だったのだ。
「ヤクルト球団は何かと“緩いこと”が特徴。際どく攻めたことをやっても球団内からNGが出ることは、ほとんどなかった。また神宮球場は通路が狭く階段が急なため、つば九郎がスタンド内を歩き回ることができない。その中で大型カラービジョンを生かしたエンタメを創造したのが素晴らしい」(ヤクルト関係者)
MLBではフィリー・ファナティックや一時期パドレスが雇用していたチキン(球団公式ではない)は、グラウンド内外を移動して様々なイタズラをして場内を沸かせた。つば九郎は神宮球場という動きが限られた場内でもできる最高の芸を作り上げた。
「一時はスタンド内も動き回れる人間的なフォルムの燕太郎とトルクーヤが生まれたが、つば九郎人気にはとても及ばなかった。(つば九郎は)基本はグラウンド内しか動けないにも関わらず、ビジョンを効果的に活用して芸風を作り上げたことが尊敬に値する」(ヤクルト関係者)
「ヤクルトはもちろん他球団選手もイジることに、当初は少なからず反発もあった。しかしつば九郎自身のアイディアや愛されるキャラクターによって誰もが認めるものになった。落合博満氏など、大御所の懐に遠慮なく飛び込んだことに驚かされていた」(ヤクルトOB)
つば九郎が“特別”だったがゆえに難しいのが今後の球団の動き。「つば九郎=担当者さんであり、ここで同キャラクターは引退させるべき」という声も聞こえる。
「グッズ売上等の人気トップを争う貴重なキャラクター。ファンの方々の気持ちもわかるが、プロスポーツ・ビジネスとして考えれば今後も登場させたいはず。同様の形で再登場させるのか、新キャラを作り出すのか。答えは存在しないだけに球団は難しい選択を迫られる」(スポーツマーケティング会社関係者)