――会社などでは、年齢や役職が上がれば上がるほど、自分の価値観を変えられず、若い人の考えや意見を素直に聞けなくなっているような人もいます。経験も実績も積まれている葛西さんは、50歳を過ぎても自分を変えることに前向きで、さまざまなアドバイスを取り入れているようですね

 固定観念を持たずに柔軟な思考を持っていたら、いろんなものが見えてくるんじゃないかなって思っていますね。何にでも対応できるような。臨機応変という言葉も好きです。仮にマイナスのことがあったとしても、すぐプラスに変えてしまう能力が僕の中にあると思うんですよ。嫌なことだったり、これはちょっと違うなって思ったりすることでも、すぐに脳がポジティブに、プラスの方向にパンと切り替わっていくので。

素晴らしい人にしか出会わない

 テニスもゴルフも大好きで練習しに行くんですけど、そこではフレンドリーに接してくださる方が多くて、そういう人たちからいろいろな情報を得られるんです。こういうトレーニングがあるんだ、こういう打ち方があるんだ、と。だから人との出会いを大切にしています。僕は、嫌な人には出会わない、というか、素晴らしい人にしか会わないんです。その出会いを通して、いろんなことを吸収していくんです。

テニスを楽しむ葛西選手(本人オフィシャルブログから)

――五輪には1992年のアルベールビル大会に19歳で初出場して以降、2018年の平昌(ピョンチャン)まで8回連続という偉業を成し遂げ、メダルも銀2つ、銅1つを取りました。前回の北京は出場こそは逃しましたが、教え子の小林陵侑選手が金メダルを取り、葛西さんの首にかけてくれました。あの時はどんな気持ちでした?

 彼とはずっと一緒にトレーニングをしてきて、世界でもずっと戦ってきたけれど、なかなか成績が出せない時期だったんです。少しアドバイスしてよくなってきて、ようやく世界で戦えるようになって、念願の、僕が取っていない金メダルを取ってくれたということで、すごくうれしかったです。反面、悔しいという気持ちもありましたよ。僕が何十年かけてもとれない「金」を軽く取りやがって、と(笑)

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「パパ、優勝した?」の第一声