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「いろいろ質問も出て、驚きました。自民党は、毎年、170億円もの血税を政党交付金の名目でもらいながら裏金をつくり、金まみれだと話しました。そもそも憲法は政党について明記していません。経済同友会は『政党法』を制定して政党のガバナンスを強化せよと唱えている。経営者にはカネで政治を買うことへの疑念もあるんですよ」
告発は憲法研究者として 大学とは一線を画す
いまや上脇は、告発で議員を震え上がらせ、政界を動かす。社会的な影響力を高める一方、大学ではじつに淡々と学生に接していた。
私が神戸学院大を訪ねた師走の日、上脇は2年生を相手にゼミ形式の憲法の授業をしていた。指名した男子学生が「選挙」に関するレポートを読み、上脇は幾つか質問したが、終わって間もない兵庫県知事選挙には触れなかった。
パワハラの疑いなどで、兵庫県議会から全会一致の不信任決議を受けて知事の職を失った斎藤元彦は、出直し選挙に立ち、予想を覆して再選した。その選挙戦は異様だった。「NHKから国民を守る党」の党首で、威力業務妨害などで有罪が確定し、執行猶予中の立花孝志も出馬した。立花は自分ではなく、斎藤に投票するよう呼びかける。いわゆる2馬力選挙が行われ、ネット上にデマや誹謗(ひぼう)中傷、脅迫じみた動画があふれた。
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この知事選の後、上脇は、元検事で弁護士の郷原信郎とともに、斎藤と、斎藤の選挙広報・SNS戦略を担当したとブログで詳述したPR会社社長の折田楓を刑事告発した。斎藤が折田に選挙運動の報酬として71万5千円を支払ったことが、公職選挙法違反の買収容疑に当たるとする。これに対し、斎藤は法に触れていないとくり返し、折田は沈黙した。いずれにしても知事選は世間の注目の的だったが、上脇は授業で言及しなかった。
授業の後、男子学生に知事選と上脇の告発について問うと、こう返ってきた。
「立花さんはSNSで凄(すご)くて、動画がスマホにどんどん送られてきました。彼の行動がいいとか悪いとか、考える暇もないというか……。上脇先生が斎藤知事を告発したとニュースで知って、へぇ、そうなんかと思いました。情報を引き出してもらって何が真実か知りたいです」
上脇は、「授業では政治に深入りしません。政治的信条で学生を評価していると誤解されるのは嫌ですから。大学では告発状も書かない。もっぱら自宅で書きます。告発は憲法研究者としての社会参加です。大学とは一線を画しています」と言う。