さらに私は、障害のある子どもを育てながら母親が働くことは、経済的事情に限らず、母親もひとりの「人」であり続けるためにとても重要なことだと思っています。子どもや保護者の体調不良や、環境が整わないために働くことが難しいケースも多々あるのが現状ですが、実際の相談現場では、「ほんの少しでも働きたい気持ちがあるのであれば、まずは働き始めたあとの生活のシミュレーションを一緒に考えてみませんか?」というアドバイスをしています。長いスパンで見た時に、子どもと母親だけの世界にこもるよりも、それぞれが外の空気(社会)に触れたり、子どもが母親以外の人に慣れたりしていくなど、長く続くケアの中で母子にとってのメリットが大きいと思うのです。

育休明けの預け先がなく退職

 私自身も30歳で出産してから10年以上専業主婦でした。育休が終わっても障害のある子どもたちの預け先はなく、仕方なく退職して以来、医療的ケア児の長女と足が不自由な息子がいる中で働くことなど考えたこともありませんでした。ところが、障害児育児の壁に何度も当たったことがきっかけで大学生になり大学院生になり、資格を取得してソーシャルワーカーになりました。仕事の日は朝から本当にバタバタで、夕飯もかなり適当です。作ることができずにスーパーの総菜やデリに頼る日もあります。それでも、外に出ることによって自分自身が持つ情報がアップデートされていく感覚があり、この知識は子どもたちの生活に還元できるためとても充実しています。ただ、わが家も18歳の壁の真っただ中にいます。「退職」は最後の手段とし、今はどうすれば生活が回るのかを必死に考えています。

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