気仙沼漁港で研修後、チームメンバーらと談笑する清水大輔さん(右)(写真:清水さん提供)
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 人手不足と採用難が続く地域の中小企業。だが、副業人材は超買い手市場だという。シニア世代も注目の「ふるさと副業・兼業」の現場をのぞいた。AERA 2025年2月10日号より。

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「ふるさと副業・兼業の市場は超買い手市場です」

 こう話すのは、マッチングプラットフォーム「ふるさと兼業」を運営するNPO法人「G-net」(岐阜市)の南田修司代表理事だ。地域の企業が新卒・中途採用募集の合同説明会を開くと、どのブースもガラガラというシーンは珍しくない。だが、副業・兼業に限れば話は全く別。「この指止まれ」と呼びかけると、指をつかみきれないほど人が集まるイメージだという。

 地域の多様な人材と、大企業人材の交流モデルを生み出す越境学習のエキスパートの南田さん。愛着のある地域や共感する事業にプロジェクト単位でコミットできる「ふるさと兼業」のプログラムを通じ、都会で生活しながら地域の産業やイベントに関わったり、大手企業に在籍しながらNPOや中小・ベンチャー企業に参画できたりする選択肢を提案している。募集プロジェクトの業務内容は明確だ。例えば、「養鶏場の継続的な採用戦略を練る人材」「宿泊施設のプロモーション」「スポーツ用品販売店のECサイト強化のため、どのモールに出店するのがベストかについての調査・アドバイス」──といった具合。

マッチング1500人

 登録者は約9千人。これまでに700件近くのプロジェクトの人材を募り、マッチングが成立したのは約1500人。毎回、募集定員を超えるエントリーがあるという。

 南田さんは「コロナ禍をきっかけにニーズが急増した」と振り返る。本業とは別に地域で副業する場合、リモートワークが中心になる。コロナ禍を機にリモートの働き方が浸透したのと同時に、通勤などの移動時間が減ったことで可処分時間が増えた。その時間を使って、コロナ禍で打撃を受けている地域の地場産業などを応援したいと考える人が実際に行動するようになった。この流れはコロナ後も定着しており、プロボノや企業研修として地域に参画する事例も生まれている。

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