注目の成長分野のほかに、後藤さんは、今後氷河期世代を中心とした中高年に訪れる年代に応じた傾向と対策も示してくれた。
まず40代半ば以降の人たちは「早期・希望退職」の対象になるケースが多い。1月中旬に東京商工リサーチが発表した、昨年の1年間で、上場企業が早期退職と希望退職を募った人数(国内分)は1万人を超えた。前年の3倍だ。
募集した企業も57社で、前年比4割増。資生堂、コニカミノルタ、リコー、日産自動車など名だたる企業が並ぶ。
リストラに走るのは、日産のような業績が悪化した企業にとどまらない。東京商工リサーチの分析では、直近の最終損益(単体)が黒字の企業が34社と全体の6割を占めた。
続く「黒字リストラ」
いわゆる「黒字リストラ」と呼ばれ、東京商工リサーチの担当者は「人手不足で賃金が上昇した分、各企業とも構造改革を急ぎ、コスト高に対応しようとしている。今年も希望退職や早期退職を募る傾向は続く」と説明する。
早期退職に応じると、退職金の割り増しというメリットはある。しかし後藤さんは、明確な計画を持った人以外には勧めることはできないという。
50代になると、次は役職定年に直面する。年齢差別という指摘もあるが、東洋経済新報社の調べでは、上場企業の4割に役職定年があるという調査結果もある。役職定年は55歳が多いと見られるが、役職がなくなるので当然、収入も下がる。
60代は定年と再雇用だ。再雇用の場合、同じ仕事で年収が大幅に下がる場合がある(パーソル総合研究所の調査結果より)。
「今までと同じ会社で働けることは、安心な面がある。しかし、年収の減少という運命を受け入れるのか。今まで自分の部下だった人たちが上司になる環境で前向きになれるかどうか」と後藤さんは話す。
物価高やAIの台頭、雇用環境の変化など、誰にも順風満帆な老後が待ち構えているとは言えない氷河期世代。だからこそ、定年後のセカンドキャリアと真剣に向き合い、本業をもちながら副業を始めたり、資格を取得したりして、自分磨きを始めよう。社内で自分の確固たる居場所を見つけるのか、それとも転職して自分を生かす道を探すのか。受け身にならず自身でキャリアを切り開く姿勢が大切だ。
「セカンド就活」は今からでも遅くはない。さあ一歩を踏み出そう。(経済ジャーナリスト・加藤裕則)
※AERA 2025年2月10日号より抜粋