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作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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先日、X(旧ツイッター)で、こんなポストをしました。
「私は東京生まれ東京育ちだから人生が激ヌルなんですけど、若いうちに地元から訳のわからん東京に出てきて、根を生やして、家を買ったり、人と出会って家族を持ったりしてるのすごいな。私は知らない土地でそんな生産的なことはできない。生まれ育った東京でですらできてない」
この何気ない投稿が、250件以上引用されて驚いています。いいねやリポストも多くされていますが、「引用された」ところがポイント。フォロワー以外からも多くされており、東京出身者とそれ以外の話、いまだに「なにか語りたくなる」ものがあるのだなとしみじみ。炎上ではないので、単に自分のことを話したくなる内容だったのだろう。
販売部数において私的最大の壁である自著『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』でも、東京の話を扱った際には大きな反応がきました。あれから10年とちょっと経過したものの、社会構造が変わっていないのだから反応も変わらないのは当然といえば当然かもしれません。
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引用の内容は大きくわけてふたつ。ひとつは東京出身者の同意。もうひとつは地方出身者の実体験。実体験にも2種類あり、ひとつはおおむね同意、もうひとつは「野望を胸に出てきたわけではなく、(仕事や教育環境などで)出てこざるを得ない環境だった」という内容でした。
18歳で大学入学した際、地方出身の同級生のひとり暮らしに憧れました。自由でいいな、と。それから10年以上経って遅まきながら私もひとり暮らしを始めた際に、「自分で自分を健やかに生かしておく」という、これまで当たり前だった作業が、実は家族という基盤に大きく支えられていたことに気づきました。これを10代後半からやっていた同級生たちには敵わないなと、茫然ともしました。
あれから幾星霜。20代半ばで母が逝去し、実家が消滅し、東京生まれ東京育ちながら、私には経済的に頼れる家族も実家も自分の家庭もありません。それでもやはり、東京生まれのアドバンテージは尾てい骨のように残っていると感じます。10代から東京で生活して基盤を築いた人たちの胆力には敵わないというコンプレックスも、うっすら健在。
おそらく、江戸時代からこうだったのでしょう。久しく放置していた私なりの東京論、改めて考えてみようかな。
※AERA 2025年2月10日号
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