1998年に新宿区河田町から港区台場に移転したフジテレビ。かつてない大きな危機を迎えている=2025年1月27日/撮影・小山歩

 この点について、フジテレビの30代の社員は、「機能しなかったガバナンスを今後どう改善していくのか、まったくわからなかった」と話す。

「社内の研修では、何かあればコンプライアンス推進室に報告があって、そのうえで対応するという順番を守っていると言っていたので、今回の事案をコンプライアンス推進室に言わずに対応を進めていたことにがくぜんとしました。意味ないじゃん、と。社員を守るのが会社だと思います。社員からの信用を得るためにも、この先同様の問題が起きたらどのように対応していくのか、しっかり説明してほしかったです」(30代社員)

 今回の件でフジテレビは、ガバナンスの弱さが露呈し、株主企業は批判の声明を出し、スポンサー企業が次々にCMを見合わせた。差し止めを発表した企業は80社に達している。

これまでとは毛色が違う社長

 新社長の清水氏にはここからの立て直しが求められるが、社長交代についての社員の受け止めはさまざまだ。

「予想していた候補のうちの一人、くらいな感じ。経営陣のトップとしての資質はわからないけど、これまでとは毛色が少し違うという意味で期待できるのでは。とにかく3月末の第三者委員会の調査報告までに何をするのか聞きたい。とりあえずもう一回、社員の声を聞く機会を開いてほしい」(前出の中堅社員)

「あまりよく知らないけど、悪い噂を聞くわけではないので新しくなるんだなと。可もなく不可もなく。不安が大きいから期待することは少ないけど、とにかく私たちが後ろ指を指される状態であることを知ってほしい。私の同僚は、子どもの保護者が集まる場で好奇の目で見られたと言っていました。子どももそのように言われているかもしれないから怖いと。もっと現場や、社員の状況を見てほしいです」(20代社員)

 フジテレビでは、80人程度だった労働組合の組合員数が、今回の件の後に約500人に増えた。社員たちの危機感は日を追うごとに高まっているという。

 そして、社員の最も大きな関心事は、日枝久・取締役相談役の進退だ。

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日枝氏を守ろう?とする経営陣