AIで顔写真生成 そのリスクとは...
「AIで生成した顔写真は、指示された現場に行った途端にバレてしまう可能性がある。住所も架空だと気づかれる可能性が大きく、捜査員をより危険な状況に追い込んでしまわないか。実施要領ではなく、国会で議論をして、内容をもっと具体的にする必要がある。特別法で定めることを考えるべきだ」
実際に、現場で闇バイト関連の事件を捜査する関東地方の捜査員は、AERA dot.の取材にこう話している。
「闇バイトの指示役も常に捜査の手を警戒している。実行役の居住実態を調べるようになると、うその住所を免許証に記載するのはリスクがありますよね。運転免許証の偽造だけでなく、郵便物の書類の偽造作成なども必要になってくる。実際に捜査員を数カ月、運転免許証に書かれた住所に住まわせるのか。この部分を詰めないと、警察だと感づかれて失敗する可能性がある」
闇バイトに関連する事件をめぐっては、指示役は実行役に運転免許証などの身分証と一緒に、顔と家の写真を撮影させるほか、実際にその人物が住んでいるのかどうか、居住実態を第三者に調べさせることがあるという。偽造の運転免許証を用意できたとしても、居住実態がないとわかれば、雇われたふり作戦は失敗するかもしれないのだ。
仮装身分捜査は、アメリカや欧州各国ではすでに制度化されている。日本でも警察庁が2012年に検討したが、法的な問題がクリアにならず、導入を見送っていた経緯がある。
今回は「法令または正当な業務による行為は、罰しない」との刑法の規定を適用することで、仮装身分捜査も可能とする判断に踏み切ったようだ。
ただ、近畿地方のある警察幹部は、
「偽造の違法性は司法から問われなくても、相手(被疑者、被告)側の弁護士に指摘される可能性は大いにある。事例もないし、現行法の解釈にも限度があると聞いている。警察庁が法の枠組みをしっかりと決めなければ、刑事裁判でも検察側が不利になりかねない。時間をもう少しかけて整備すべきだ」
と訴える。そして、こう疑問を呈した。